World Energy Watch

2017年11月15日

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補助金次第の不透明な米国のEV市場

 米国でEVを購入すると連邦政府から7500ドル(85万円)の税還付を受けることができる。プラグインハイブリッド車は車種により異なり、プリウスでは4502ドルだ。税還付なので、納税額が還付額以上なければ、納税額が還付額の限度になる。

 この制度は、初期生産時に高額になるEVの販売を支援することにあり、メーカー1社当たり20万台の販売数に達した時点で打ち切りになる。今、最も早く打ち切られるとみられているのはモデル3の販売が始まるテスラだ。米国内で今までに販売されたテスラ車は14万台を超えたところとみられており、来年度前半には7500ドルの税還付の上限台数に達する見込みだ。

 既にモデル3の予約金を支払っている買い手の中には、税還付を当てにしている客もいると思われる。この制度がなくなれば、販売にかなりの影響が生じる可能性が高い。連邦政府に加え、米国ではカリフォルニア州など一部の州もEV購入の補助金制度を導入している。そんな中の1州、ジョージア州が6月に5000ドルの税還付制度を廃止したところ、EV販売は壊滅的な打撃を受けたのだ。

 6月の販売台数1338台が8月には148台に落ち込んだ。高額所得者が購入するテスラSも例外ではなく123台から29台になった。連邦と州政府の補助金制度がやがて廃止された時に米国内のEV販売はかなり打撃を受ける可能性が高い。そのためか、テスラは今販売で苦戦している中国市場に活路を見出そうとしている。

テスラ上海工場の狙いは

 中国で販売されているEVが主体の新エネルギー車の95%以上は、価格が1万元(170万円)以下と言われており、7万元以上の価格がついているテスラ車の販売は苦戦している。今月のトランプ大統領と習近平主席との会談では、テスラ車の輸入増も話題になったと米国のメディアは報道しているが、テスラは米国からの輸出ではなく現地生産を視野に入れている。

 10月下旬に、米国ではテスラが中国上海の自由貿易地区にEV製造工場を建設すると報道された。海外の自動車メーカーが中国で生産を行う際には中国企業と合弁事業体を作る必要があったが、テスラは初めて合弁ではなく、外資100%で生産を行うことが認められた。

 ただし、輸入車と同様の扱いとなり、25%の関税が課せられることになる。付加価値税が関税にも課せられるので、実効税率は30%弱にまで跳ね上がる。それでも、テスラが上海に工場を建設するのは中国製の部品を調達し価格を引き下げることにより、EVの主戦場になる中国市場でのシェアを狙うことにある。製造されるのは相対的に価格が安いモデル3とモデル3のプラットフォームを利用する新型小型SUVのモデルYになるとイーロン・マスクは述べている。

 問題は、テスラに中国で投資を行う資金がないことだ。11月1日にアナリストから中国工場について質問を受けたイーロン・マスクは、中国工場への投資は2018年には殆ど行われず、大型投資は2019年になると答えている。モデル3の生産と販売が軌道に乗るまで資金調達が難しいことが、投資が2019年にずれ込む主たる理由だろう。

 フォルクスワーゲン、ダイムラーなどのドイツ勢に加えテスラも中国工場建設に踏み切った。中国でのEV競争に乗り出した日本メーカーだが、トヨタの切り札は安全性に優れ、充電時間も短くなる全固体電池になるのだろうか。資金面で問題を抱えるテスラだが、行動は素早い。日本メーカーも中国市場での動きを早くする必要がある。
 

  
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