中国人観光客はいま

2017年12月18日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)などがある。

 「ねぇ、ここで写真撮りましょうよ!」

 「うわ~、ステキな景色ね」

 そんな声が聞こえてくるのは、有名な観光地でもなければ、煌びやかなイルミネーションの前でもない。

 ここは福岡県朝倉市秋月という、人口が1000人を割るほどの小さな城下町だ。福岡空港から車で約1時間。電車の路線が通っているわけでもない不便な田舎町だが、ここには今、福岡港にクルーズ船でやってくる中国人観光客が大型バスで乗り入れるようになったのだ。私が取材で訪れたのは午前10時過ぎ。早朝、クルーズ船を下りてやってきた観光客が風情ある民家の玄関前で記念撮影しているところに出くわした。

 実はここ数年、秋月はクルーズ船だけでなく、中国人や欧米人など外国人富裕層などにも人気のスポットとして、知る人ぞ知る存在となっている。「筑前の小京都」と呼ばれる一帯には歴史のある武家屋敷や木造の民家が立ち並び、美しい川が流れ、春には桜並木、秋には見事な紅葉が楽しめる。特別なものは何もないが、日本の美しい四季の移ろいが味わえる貴重な場所だ。

中国人女性が古民家の宿をオープン

 この静かな城下町の一角で『秋月古民家旅館 游』をオープンさせたのが中国人女性、邢秀芹(けい・しゅうきん)さんだ。

「秋月古民家旅館 游」の前に立つ邢秀芹さん

 邢さんは中国・河南省生まれ。中国の大学で日本語を学び、日本語ガイドの資格を取得。2002年に来日し、九州大学大学院に進学した。その後、JTBに就職。国際旅行営業部などで働いていたが、独立して仕事をしようと思い、2015年に退社。16年に自身の会社「タイム&メモリー」を設立し、今年12月に古民家旅館をオープンした。主な事業はインバウンド事業と古民家経営の2つだ。

 「日本の旅行会社では主に団体の受け入れなどを担当してきましたが、これからは中国の家族連れなど、少人数だけれど、こだわりの強いお客様に対して、きめ細かい対応をしていきたいと思いました。私自身、旅行が大好きで、お客様の気持ちもよくわかるからです。お客様からは部屋のタイプやベッドのサイズなど、細かいお問い合わせや注文がありますが、独立した今だからこそ、一つひとつの旅行プランに十分対応することができ、やりがいを感じています」

 「また、旅館やレストランを手配するだけでなく、自分自身でも宿をやってみたいという夢があり、それも実現することができました」

古民家に合う温かい灯り

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る