西山隆行が読み解くアメリカ社会

2017年12月14日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)などがある。

 12月12日にアラバマ州で行われた、アメリカ連邦議会上院議員補欠選挙は、民主党のダグ・ジョーンズ候補が勝利した。開票率99%の時点で、ジョーンズと共和党のロイ・ムーア候補との獲得票数は673,236と652,300で約2万票差、得票率は49.9%と48.4%と約1.5%差である(http://edition.cnn.com/election/2017/results/alabama-senate)。

米アラバマ州上院補選 投票日当日 野党候補が勝利(写真:UPI/アフロ)

 先日の原稿(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11192)でも指摘したように、アラバマ州はアメリカで最も保守的な州の一つであり、共和党の牙城となっている。宗教的に見ると、住民の50%以上が、回心体験を重視する福音派(エヴァンジェリカル)である。そして、ムーアは、州最高裁判所主席判事となることを目指した選挙で州の裁判所の中にモーゼの十戒の石碑を建てることを選挙公約に掲げたり、同性婚を認める連邦最高裁判所の判決を無視して同性婚の禁止を継続する判決を出そうとしたりしたことからわかるように、極めて保守的な人物だった。キリスト教倫理を強調するムーアが30代の時に、10代の少女に性的な関係を迫ったことが暴露される中で、この補欠選挙は実施された。

誰がムーアを支持し、支持しなかったのか

 CNNによる出口調査の結果を見てみると、男性は42%がジョーンズに、56%がムーアに投票したのに対し、女性はそれぞれ57%、41%と、男女で投票先が分かれていた。人種については、白人は30%対68%でムーアを支持したものの、黒人は96%対4%と圧倒的にジョーンズを支持していた。非白人というくくりで見れば、88%対11%となり、ジョーンズが優勢だった。なお、黒人女性が98%対2%と圧倒的な差でジョーンズを支持したのに対し、白人女性については34%対63%でムーアに対する支持が強かった。

 学歴については、大卒者は54%と43%でジョーンズを、大卒未満の場合は47%と52%でムーアを支持していた。支持政党別の違いを見ると、民主党支持者は98%対2%でジョーンズを、共和党支持者は8%対91%でムーアを、支持政党なし層は51%対43%でジョーンズを支持していた。年齢については、若年層がジョーンズを支持し、高齢者がムーアを支持する傾向が見て取れた。

 宗教についてみると、回心体験をしたか福音派である人々は18%対80%でムーアを、そうでない人は76%対22%でジョーンズを支持していた。調査に回答した人の中で中絶容認派は41%を占め、81%対18%でジョーンズを支持している。他方、中絶反対派は52%であり、26%対72%でムーアに投票している。

 ムーアの性的スキャンダルが事実だと考えている人は回答者の52%、事実でないと考えている人は43%を占めており、前者が89%対8%でジョーズを支持しているのに対し、後者は4%対94%でムーアを支持していた。性的スキャンダルが選挙に際して重要な要因となったと答えた人は全体の42%にのぼり、83%対14%でジョーンズを支持した。他方、重要な要因でないと答えた人は53%であり、27%対72%でムーアを支持している。

 出口調査ではドナルド・トランプ大統領に対する支持と不支持がともに48%と拮抗したが、トランプ支持者は9%対89%でムーアに、トランプを支持しない人は93%対6%でジョーンズに投票している。

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