2024年4月20日(土)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年12月8日

 では、日本はどうか? 菅直人首相の右腕である仙谷由人官房長官に対する今の自民党の攻撃がどうなるかはさておき、終わったばかりの沖縄県知事選挙は、長年行き詰っている普天間基地移設論争の解決を約束するどころか、さらに数カ月間、ことによれば数年間に及ぶ手詰まりをもたらすように見える。

 これが北アジアの安全保障を守るための実際の協力体制にどう影響するかは、誰にも分からない。というのも、沖縄に米海兵航空団を維持する理由の中で唯一説得力があるのは、北朝鮮(あるいは中国)が絡む危機が起きた場合、軍隊がヘリコプターと離れていたら、部隊を適切に配備できる前に戦争に負けてしまう恐れがある、というものだからだ。

 さて、以上が今月議論するテーマの「序説」だ。

「限定攻撃」のリスクはどれほど?

 ワシントンでは最近、北朝鮮の行動がいよいよ挑発的になっており、北朝鮮政府は「比例報復(敵の攻撃の規模に見合う応戦)」の感覚が乏しいために、米国か韓国が北朝鮮の「次の事件」に報復するという最近の約束を守った場合、怒涛のような事件が手に負えなくなる本物のリスクがある、との懸念が高まっている。

 実際、オバマ大統領は延坪島への砲撃があった2日後に「ホットライン」を使って胡主席に電話しようとしたが、中国側はこの件について話す用意が全くできておらず、本稿を執筆している時点でも、まだ電話はかけられていなかった(残念なことに、中国は危機の話題を避ける傾向があり、2年前に中国艦船が南シナ海で米軍音響観測船「インペッカブル」と対峙した際も、電話が鳴るに任せて取らなかった)。

 もちろん今回は、電話会談はいずれ実現する(注1)。また、よほどの惨事がない限り、胡主席は来年1月17日から米国を公式訪問する。その際、北朝鮮問題は協議議題のかなり上の方に来る。だが、それまでに何が起きるか分からない。

注1:本稿執筆後、12月6日行われたオバマ米大統領と中国の胡錦濤国家主席との電話会談では、北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)への砲撃について初の意見交換が行われた。米ホワイトハウスによれば、オバマ大統領は、北朝鮮の一連の行為を非難し、挑発行為は許容できないとの明確なメッセージを北朝鮮に送るよう胡国家主席に協力を要請した。
 

 
北朝鮮の報復の脅しが、“核兵器”の利用を意味すると本気で思っている人はいない(実際、北朝鮮は少なくともまだ、“まともに機能する”核爆弾を持っていないと考える向きがかなりある)。

 しかし、ミサイルと通常弾頭、そして、いまだに相当強力とされる北朝鮮の長距離砲は、そう、例えば韓国の仁川(インチョン)空港やソウルの繁華街に大惨事を引き起こす力を持っている。

 では、米国のアナリストたちは、北朝鮮が宿敵・韓国の首都を攻撃すると本気で予想しているのか? そんなことをすれば、米国と韓国が報復するのだから、国家の自殺行為になるのではないか?

 実は米国のアナリストは、ソウル(もしくは仁川空港)が「次の挑発行為」の標的になるとすれば、妨害行為かテロリストの爆弾によって実行される可能性の方が高いと見ている。

⇒次ページ 中国に北朝鮮への外交努力を期待してみたものの・・・


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