2024年12月9日(月)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年12月8日

  弱い国や弱い指導者の方が、自制するだけの自信がある国や指導者よりも、本物かどうかはさておき、とかく脅威に過剰反応し、戦争を引き起こす可能性が高いのは、歴史のパラドックスだ。

 そして、そうした弱さ(少なくとも政治的な弱さ)は、韓国と日本、米国ばかりでなく、我々の見るところ中国と北朝鮮にも共通する特徴だというのが今の不運な現実である。

米中朝にとって2012年はキモの年

 2012年は、中国政府、米国政府、北朝鮮政府にとって極めて重要な年となる。中国と米国では国家元首を選ぶ選挙が行われ、北朝鮮は建国の父、金日成(キム・イルソン)主席の生誕100周年を祝う。では、日本はどうか? 2012年に日本がどうなっているかは、誰にも分からないだろう!

 中国では、胡錦濤国家主席の後継者への重大な指導者交代が、前任者たちほど強くない競合する政治家や軍人、派閥間の争いを生んでいる。

 尖閣危機に対する中国の対応や、レアアース(希土類)の輸出禁止措置、原子力空母「ジョージ・ワシントン」が参加する米韓海軍合同演習に対する中国政府のパニックめいた反応が示唆しているように、中国の現指導者や次期指導者は誰も、強硬な言葉を振りかざす国家主義や人民解放軍の攻撃的な態度に抵抗できるだけの強い自信を持ち合わせていない。

たとえそれが、10年間にわたって慎重に実施してきた「ソフトパワー」外交を台無しにする横暴な行動に発展しようとも、抗えないのだ。

 北朝鮮では、2012年が迫り来るなか、死期が近い金正日(キム・ジョンイル)総書記から明らかに資格を欠く27歳の金正恩(キム・ジョンウン)氏への権力移譲のために、「文民」の指導者がかつてないほど強硬路線の軍部に支持を依存するようになっている。

 大半の専門家は今、韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」に対する攻撃と、恐らく先の韓国・延坪島(ヨンピョンド)への砲撃は、若い正恩氏の「経歴」に箔をつけ、金一族を軍部エリートと一層強固に結びつけるために指導部が承認した行動だったと考えている。

 これと同じ衝動が、北朝鮮に対する非軍事的圧力への報復をちからつかせる同国政府の「通常の」扇動的な脅し文句さえをも強めているようだ。

アメリカ、日本の外交安保は手詰まり感

 米国では、バラク・オバマ大統領が北朝鮮と同国の支援国である中国を批判する自信を得ているように見える。だが、反中国、反北朝鮮の立場を取る超保守派の指導者たちが近く米議会下院を掌握するため、軍事危機に限らず、北アジアのいかなる情勢に関しても、オバマ大統領に「タフ」な対応を迫る絶大な圧力がかかるだろう。

 しかもこれは、北朝鮮問題以外の要素を考慮に入れる前の話だ。何しろ、オバマ大統領はイラクとアフガニスタンから米軍を撤退させようとしており、2つの戦争がすべて大成功で終わらない限り、共和党が大統領を「攻撃」することは確実に予想される。悲しいかな、これらの戦争が成功すると思っている人は誰一人いない。

⇒次ページ 仁川空港やソウルを「限定攻撃」する可能性も


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