世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月17日

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 ナイは戦後のパックス・アメリカーナにおける米外交のイデオローグです。ここでは、中国の台頭、米国トランプ政権の内向き化(国防予算は拡充するが)が既存の同盟体制を揺さぶっていることは度外視し、米国の力の絶対性と既存の同盟体制の不変性を前提とした議論を展開しています。

 そのような議論が持つ危険性は、ナイが上記(4)で平和条約の締結を安易に提案していることに如実に示されています。なぜなら、朝鮮半島で平和条約が成立すると、韓国内では在韓米軍撤退を求める声が強まって、現在の文政権はそれを抑えるどころかむしろ乗る方向に動く可能性があり、在韓米軍が撤退すれば韓国は裸になって、北朝鮮との統合を求めるようになります。両国が統合すれば、ロシア並みのGDPと核兵器を持つ大国がこの地域に誕生し、それが日米中露の間で常に揺れ動くようになるからです。ナイは、サンフランシスコ平和条約締結と同時に日米安保条約を結んだ日本の例を念頭に置いているのかもしれませんが、現在の韓国は、当時の日本とは全く違います。

 従って、北朝鮮の核兵器開発の凍結に対して、米韓共同演習抑制だけでなく平和条約締結まで提案するのはやり過ぎではないかと思います。また、ナイの思考の中に、ロシアを利用することが全く入っていないのは奇異です。

 いずれにしてもトランプ政権は、今のシリアで見られるように、自分は身を引いた上で紛争解決を周辺国に丸投げし、折を見て彼らの交渉結果に介入して、周辺国との二国間問題を自分に有利に解決するための交渉の具にしようとする傾向があります。その際、同盟国は振り回されるかもしれません。日本は、この北朝鮮の核ミサイル問題でも、梯子を外されることのないよう、気をつけていく必要があります。

  
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