世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月8日

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 11月26日付の香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙で、International Crisis Groupのコブリグが、習近平の戦略について論評しています。要旨は以下の通りです。

(iStock.com/Galinka/mirquurius/Vik_Y)

 10月の共産党大会で、習近平はその地位をさらに高めた。外交に関しては、国務委員の楊潔篪が政治局委員に、理論家の王滬寧が政治局常務委員にそれぞれ昇格し、習近平の野心的な対外政策を支えることになった。習の前任者たちは、内向きの中国を統治し、「韜光養晦」を続け、難しい問題は将来に先送りしてきた。しかし、習近平にとって、その「将来」は自分の任期中にやってくる。

 今日、中国は台頭中の大国であるが、人口や経済、環境など、多くの問題を抱えている。そのため、習近平の「中国の夢」や「中華民族の偉大なる復興」、地域における主導権と国際的影響力を持つ「新時代」を実現するのは容易ではない。これらの大きなビジョンは抽象的だと軽視されがちだが、中国の官僚たちはそれを実現するために着実に具体的な取り組みを進めている。習近平が「人類運命共同体」というとき、それはアジア太平洋における米国を中心とする安全保障の勢力均衡の体制からのパラダイムシフトを求めているのであり、中国経済を原動力として、中国中心の秩序への移行を望んでいる。

 習近平の外交を支えているのは、ある種の「小切手外交」であり、相互協定や相互利益である。中国共産党はこのアプローチを「大国外交」と呼んでいる。それには経済、軍事、国際組織の3つの軸がある。それぞれ宣伝、公共外交、影響力の行使と結びついており、これらは必要ならば脅しに変わる。

 経済については「一帯一路構想」が枠組みとなる。この枠組みを通して、中国は金融、建設、製造などにおける強みを生かして国際貿易および投資のあり方を作り直し、中国の地政学的、経済的利益を確保しようとしている。一帯一路は党規約に盛り込まれ、それが長期的な考えであることが示された。

 第2の軸である軍事について、人民解放軍の近代化が進められている。習近平は第1期政権において、監視とイデオロギー的統制を強化し、腐敗を叩くことで軍の忠誠を確保した。軍の制度改革も進められ、多くの幹部が習近平によって任命された。党大会を通して、習近平はさらに指揮権を集中させた。

 第3の軸は、国際組織における中国の発言力の拡大である。中国は西側主導の国際システムに疑念を抱き、今ではその体制を改革し、修正しようとしている。AIIBやBRICSの新開発銀行など、中国が主導的な役割を担える組織を次々に作っていることからも分かる。しかし、これは一種の多様化戦略であり、既存の国際システムに対する革命ではない。

 中国はグローバル公共財を提供することで得られる国際社会からの尊敬とソフトパワーを切望している。また、中国は拡大する海外権益と在外国民を保護する必要がある。そのために、中国は国連を重視している。例えば、中国は安保理常任理事国の中で、PKOへの最大の派兵国となっている。

 この経済、軍事、国際組織を軸として、習近平は新時代を作ろうとしている。習近平への権力集中を進めることで、中国共産党は自らの正統性を政治目標の実現と結びつける政治的賭けに出たのである。この賭けに成功するために、習近平は多くの問題を上手く処理する必要がある。例えば、北朝鮮の核問題、貿易や太平洋における支配をめぐる米国との対立、中国の野心に懸念を持つ周辺国が連合して中国の台頭を抑制するリスクなどである。複雑な地政学的状況と習近平の野心が相まって、今後数年が平穏なものになることはないだろう。

出典:Michael Kovrig ‘The future is now for China’s challenges and Xi Jinping’s ambitions’ (South China Morning Post, November 26, 2017)
http://www.scmp.com/news/china/diplomacy-defence/article/2121510/opinion-future-now-chinas-challenges-and-xi-jinpings

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