チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年11月6日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 2017年10月24日、中国共産党第19回全国代表大会(19大)が閉幕し、翌25日に19期1中全会が開催された。19期1中全会とは、19大で選出された中国共産党中央委員会の委員による第1回の全体会議のことを言う。

第19期中央委員会第1回全体会議の様子(写真:UPI/アフロ)

 中央委員とは、約200名の中国共産党の指導幹部であり、その中から25名が政治局員に選ばれる。一般的に、この中央委員会を「党中央」と言う。さらに、政治局員から選ばれた7名が政治局常務委員として最高権力を握る。

 ただし、人数は7名に固定されている訳ではない。胡錦涛前総書記の時代には、政治局常務委員は9名であった。胡錦涛氏から習近平氏に権力の委譲が行われた2012年の18大において、江沢民氏は自らの勢力を拡大するため、政治局常務委員の人数を13名にしようとしたと言われる。

 これに対して、胡錦涛氏は自ら完全引退するとともに、政治局常務委員の人数を増加させるどころか7名に削減し、習近平氏の権力掌握をサポートしたのだ。中国の指導者たちは、日本でよく言われるような、江沢民派(上海幇)、胡錦涛派(共青団派)と習近平派(太子党あるいは紅二代)の三つ巴の権力闘争よりも、少し複雑なゲームをプレイしている。

鄧小平氏が指示した「全面的な小康状態」

 胡錦涛氏が、習近平氏の権力掌握を支持し、これを助ける動きをしたのは、中国指導部の間に、「中国が経済発展を継続するためには改革が必要であり、改革を進めるためには権力を掌握した強力なリーダーシップが必要である」というコンセンサスがとれているからだ。

 中国指導者たちの共通した危機感は、19大開幕初日の10月18日に習近平総書記が実施した政治報告の中に見て取ることができる。この政治報告には、「小康社会の全面的な建設完成に必ず勝利し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を奪取する」という題が付けられている。

 この政治報告の内容から、中国指導部の関心がどこにあるかが理解できる。19大からの5年間のキーワードは「新時代」だ。しかし、中国が「新しい時代」に入るのは、例え党指導者が習近平氏でなかったとしても同様である。この5年の間に、2020年を迎えるからだ。鄧小平氏が指示した「全面的な小康状態」を達成すべき2020年が、中国共産党第20回全国代表大会(20大)までの間に訪れる。

 そこから先、中国は、偉大な指導者の具体的な指示のない新たな発展の段階に入り、新たな目標を設定する必要がある。だからこそ、政治報告では、新時代の中国の特色のある社会主義思想とそれを実現する方策、新時代の共産党の使命等を説明しようとするのだ。

 一方で、この政治報告では、偉大な指導者である鄧小平氏の指示を記載しているものの、鄧小平氏の掲げた目標を達成した後に何を目指すのか、具体的な政策等は明記されていない。それでは、政治報告、そして19大の目的とは何なのか?それは、「新時代」に向けて、中国共産党指導者の、ひいては中国共産党の権威を、毛沢東氏及び鄧小平氏なみの高さにリセットすることである。

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