2024年4月28日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月4日

 米国在住華人によって運営されている中国情報ウェブサイト多維新聞のライターである穆堯が、10月25日付けの論説で、新しく選出された中国共産党中央軍事委員会について分析しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/Iryna_L/Ismailciydem)

 10月25日、中国共産党の新しい最高指導部と同時に、中央軍事委員会の構成も決定された。観察者にとって意外だったのは、委員の数が増えるどころか減少し、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍、戦略支援部隊のトップが委員にならず、江沢民時代の7人体制に戻ったことである。

 新しい軍事委員会において、副主席は2名のままで、許其亮と張又侠が就任した。許其亮は空軍出身で、第18回党大会(2012年)で次席副主席として軍事委員会に入った。ここ5年間、許は習近平に重用され、中央軍事委員会の巡視工作領導小組組長を務め、習近平の権威を高めるのに貢献した他、2015年末に進められた大規模な軍改革においても中央軍改革領導小組常務副組長を務め、実質的な執行者として活動した。今回、筆頭副主席だった范長龍が定年退職し、許がその後を継いだ。

 張又侠は建国時の上将張宗遜の息子であり、「紅二代」だ(宮本注:習近平とは父親同士が同郷の戦友)。第18回党大会前、副主席の最有力候補と思われていたが、郭伯雄、徐才厚などの影響力、様々な利害関係のために、総装備部部長として序列末尾の委員に就任するに留まった経緯がある。張又侠は軍の中でも数少ない実戦経験を持つ軍人だ(1979年の中越戦争やその後の1984年の中越軍事衝突に参加)。張又侠は副主席として軍の訓練を担当すると思われる。

 前ロケット軍司令員の魏鳳和は副主席への昇格は叶わなかったものの、委員には留任した。委員の筆頭にあることから推測して、来年の全人代で国防部長に就任するものと思われる。国防部長は軍事外交を担当し、実権のない名誉職と言えなくもないが、1993年以来、総参謀部長と総装備部長が交替で就任してきた。今回の党大会前には、統合参謀部参謀長の房峰輝が国防部長になると思われたが、党大会代表の名簿にも掲載されず、摘発されて調査を受けていると報じられた。この状況での魏鳳和の国防部長就任は順当であろう。

 他の3名の委員はそれぞれ聯合参謀部参謀長の李作成、政治工作部主任の苗華、中央軍事委員会規律検査委員会書記の張升民だ。これらの人選も順当である。聯合参謀部と政治工作部はもともと「半レベル高い」総参謀部と総政治部の直接的な後継組織であり、その責任者が軍事委員会に入るのは自然である。中央軍事委員会規律検査委員会書記が軍事委員になるのも当然だ。習近平政権の五年の間、もっとも目立った活動は反腐敗であり、軍内においても例外ではない。その中心となった規律検査委員会の地位は向上している。2015年の軍改革で規律検査委員会が政治工作部と分離し、格上げされたことで、権限が拡大した。

 第19期中央軍事委員会の構成は完全に変更され、胡錦濤時代の四総部(総参謀部、総政治部、総装備部、総後勤部)及び各軍種の責任者が軍事委員会入りする伝統は放棄され、江沢民時代の構成に戻った。規模は11人から7人に縮小された。五大戦区、五大軍種及び軍事委員会に属するその他の組織の責任者はもはや中央軍事委員会に入れないことがわかった。この変化は、部門利益によって軍事委員会主席の権限が弱体化することを抑止し、軍事委員会の意思決定機能を強化するであろう。

出典:‘中央军委大瘦身 重返江泽民时期体制’(多維新聞, October 25, 2017)
http://news.dwnews.com/china/news/2017-10-25/60019657.html


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