世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月4日

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 今回の中央軍事委員会の人事は、習近平による人民解放軍改革の一つの集大成を示しています。習近平の軍改革は、軍令は基本的に制服に残しつつ、軍政(人事と管理)は中央軍事委員会に集中させるものでした。陸軍中心の8大軍区を、統合作戦を可能とする5大戦区に改変し、4総部体制も15機関体制に変え、個々の組織の力を削ぎました。腐敗体質を改め、現代戦を戦えるようにする軍の大改革でした。人事も急速に進め、自分の息のかかった人物を多く登用しました。中央軍事委員会の6人の制服組の内分けは、陸3、ロケット2、空1となりましたが、もはや誰も正面から習にノーと言える人物はいません。

 習近平は、党中央の“核心”となり、人民解放軍の“最高統帥”となり、ついに“習近平思想”が党規約に盛り込まれました。中央軍事委員会も、政治局常務委員会と同様、もはや胡錦濤時代のように多数決で物事が決められることはありません。人民解放軍についても名実ともに習近平の軍隊になったと言うことができます。

 しかし、党全体に対する習近平の権力集中により生じる問題と同じ問題が、軍においても起こり得ます。例えば、中国専門家で米クレアモント・マッケナ大学教授のMinxin Peiは、Foreign Affairs誌のウェブサイトに11月1日付けで掲載された’China’s Return to Strongman Rule-The Meaning of Xi Jiping’s Power Grab`と題する一文で、「習に対する党の抵抗は官僚機構から起こり、それは権益ネットワークの再構築を習が許さない限り、官僚機構の忠誠心は去る(という形をとる)」と言っています。そして「官僚たちは、上の政策の実施をサボタージュすることになり、その結果、経済がスローダウンすれば習の権威もたちどころに失われることを官僚たちは知っている」と言います。これは、適切な観察と言ってよいでしょう。

 人民解放軍においても、この「権益のネットワーク」をどう処理するのかという問題があります。「戦い、勝つ」軍隊にするためには、“動機付け”が不可欠ですが、高邁な理念や「夢」で動く人の割合は世界中どこでも多くはありません。金銭的な“動機付け”が激減した分だけ“対外強硬路線”で埋め合わせる、などということだけは勘弁願いたいものです。

  
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