世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月23日

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 ワシントン・ポスト紙が、「トランプはイラクとシリアにおいてオバマの過ちを繰り返すべきではない」との社説を10月21日付けで掲載、米国は「イスラム国」崩壊後もイラクとシリアに関与し続けるべし、と論じています。社説の論旨は、次の通りです。

(iStock.com/Comstock/Maltaguy1/DAJ/ ImagoGY/releon8211)

 米国が支援するシリア兵力によるイスラム国の首都ラッカの奪還は、カリフ国を消滅の間際にまで持ってきた。かつての領土の87%を失い、間もなく残余の部分からも追い出されるだろう。しかし、テロリストの敗北は、イランとロシアがその影響力を固めようとしているイラクとシリアにおいて、米国に複雑な問題を提起する。もしそれに対抗する米国の戦略があるとしても、それは明らかではない。

 トランプ大統領は不当にイラン核合意を掘り崩しながら、米国は地域でのイランの侵略に抵抗すると約束した。しかし、トランプ政権は、イラク軍が米国の同盟者たるイラクのクルドをキルクークと近くの油田から追い出すのをイラン主導の民兵が助けている時、受け身に終始した。トランプは、米国はこの戦いにおいては中立であると述べた。シリアについては、ロシアとイランが血にまみれたアサド政権の権威を再確立し、自分たちのための基地を確立しようと努める中、傍観しているように見える。

 ラッカの戦いの最中、ロシア・イラン・アサド連合軍はユーフラテス側の向こう側の領土を奪取した。シリアの主要油田を含む東部シリアでの領土獲得競争でアサド側は勝ちつつある。米国と違い、ロシアとイランは「イスラム国」排除後も、自分の同盟者を支援している。国務省によると、米国はシリアに留まるよりもラッカを「他の国またはホスト国に渡す」計画であるという。おそらく、ロシア、イラン、アサド政権を意味するのであろう。

 ロシアはシリアの隣国を和平計画に引き入れることに成功している。9月、トルコはアルカイダ系の連合が支配する北西地方イドリブでの戦闘を終わらせる取引に合意した。最近、トルコ軍はトルコ国境に近い領土に侵攻している。トルコが過激派と対決するのか、米国と同盟しているクルドを攻めるのか、まだわからない。今はアルカイダと交渉している。

 イスラエルは置いてきぼりを食っている。ネタニヤフ首相はイランのシリアにおける「軍事的存在」を問題にしたが、ロシアは無視している。イスラエルはシリア領内深く爆撃を敢行、イランの軍事力増強を止めようとする軍事行動を強化している。イスラエルへのシリアからのイランの脅威を防ぐ米国の意図は見えない。

 トランプは戦略的利益を損なうことなくイラクとシリアから手を引くことができると考えているのかもしれない。もしそうなら、オバマ大統領の過ちを繰り返している。同盟者を守り、イラクとシリアでの新しい政治的秩序樹立に失敗することは、もっと多くの戦争、新しいテロ脅威、最終的には更なる米国の介入の必要性につながっていくだろう。

出典:‘Trump shouldn’t repeat Obama’s mistake in Iraq and Syria’(Washington Post, October 21, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/trump-shouldnt-repeat-obamas-mistake-in-iraq-and-syria/2017/10/21/a3462602-ade3-11e7-be94-fabb0f1e9ffb_story.html

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