チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年1月12日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 中国が懸念を示すのは、中国が、自身を取り巻く安全保障環境が変化することを望まないからだ。日本の艦隊が防御能力を高めることは、他国の対艦攻撃の効果が低下することを意味する。それだけでも、中国にとっては、パワー・バランスに変化をもたらす可能性があるものとして懸念材料になる。

 こうした懸念を持つ中国は、本来であれば、より強く日本をけん制するはずである。しかし、先に述べた新華社の報道は、懸念を示しつつも、直接、日本を非難する論調を含んでいない。こうした状況は、中国に他の目的があることを示唆している。それは、日中関係改善である。

中国が懸念する米国の軍事力行使

 新華社が「いずも」空母化を報じた頃、自民党の二階俊博幹事長ら訪中団が習近平主席と会見している。中国メディアは、習近平主席の日本の訪中団との会見を「破格の会見」と呼んだ。この訪中は、日中執政党交流メカニズムに基づいて行われたが、これまで中国側は党中央政治局常務委員が会見するのが習わしとしており、党総書記・国家主席が会見したのは、これが初めてだったからである。

 そして、さらに異例だったのは、翌29日の人民日報の一面に、カラー写真入りで、習近平主席と日本の訪中団の会見の記事が掲載されたことである。一方で、中国共産党中央から各メディアに対して、二階幹事長らが中国に滞在している間、日本批判を控えるよう指示が出されていた。

 この二つの事象に関する中国の報道の状況は、中国にとって、海上自衛隊の艦隊防空能力が向上することよりも、日本との関係が悪化したままになっていることの方が、中国の安全保障にとって悪い影響を与えると考えていることを示唆している。

 北朝鮮の核兵器開発問題が地域の緊張を高める中、中国が最も懸念するのが、北東アジア地域における米国の軍事力行使である。北朝鮮の存続の問題を含め、中国にとっての安全保障環境に大きな影響を与えるからだ。米国が中国に対しても圧力を強める状況で、中国が孤立することがないよう日本との関係を改善することは、中国にとって焦眉の急であるとも言える。
 

  
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