中国が資金力に裏打ちされた圧力と工作によって西側諸国を操作しているのに対し、西側は透明性を推進し実態を明らかにすることが最良の防御になる、と12月14日付の英エコノミスト誌が述べています。要旨は次の通りです。
多くの人は、中国は、領土はともかく、人々の心を征服しようとしているのではないかと恐れている。最初に警告を発したのは、中国による政治、大学、出版業への介入疑惑に揺れる豪州で、今月、政府は外国勢力による政治介入防止のための法案を提出した。続いて英国、カナダ、ニュージーランドも警鐘を鳴らし始め、米議会は中国の影響力拡大について公聴会を開いた。
文化や価値の魅力で国力の増大を図ろうとするソフトパワーに対し、圧力と工作で外国の意見を繰ろうとする中国の行動は「シャープパワー」と呼ばれる。
他の国同様、中国もビザ、補助金、投資、文化を国益追求に利用してきたが、近年、その行動はより威圧的かつ網羅的になってきた。中国のシャープパワーは、(1)破壊活動、(2)弱い者苛め、(3)圧力から成り、これらは組み合わさって自主検閲を促進する。破壊活動は、豪州等では中国のカネは政党や政治家への寄付となって政治的影響力を獲得したと言われる。また、ドイツの情報機関は、中国は招待旅行やSNSを使ってドイツの政治家や官僚を誘惑したと言っている。
弱い者苛めも様相が変わった。中国の人権活動家にノーベル平和賞を与えたノルウェーへの経済制裁のようなものもあるが、多くは、学者が中国の機微な問題の研究は避ける等、中国の関与を証明し難いものになっている。
中国はあまりにも西側の経済、政治、文化生活に組み込まれているため、西側は中国の圧力に対して弱い。企業も巨大な中国経済を前に、中国の言いなりになってしまう。豪州の出版社は、北京を恐れて突如ある書籍を回収した。
一方、中国が海外で擁する利害は拡大した。1978年以降、一千万の中国人が海外に移住し、中国企業は富裕国の資源、戦略的インフラ、農地等に投資し、海軍は遠洋の海でも戦力を誇示できるようになった。加えて、新興の大国としてグローバルなルールも変えたいと思っている。
開かれた社会が中国のシャープパワーを無視するのは危険だ。先ず、開かれた社会の防衛は実際的であるべきで、(1)スパイ防止活動、(2)法律、(3)独立のメディアが破壊活動に対する最良の防御になる。中国共産党は表現の自由、開かれた議論を抑圧している。光を当てるだけでそのシャープ戦術の威力は減る。西側諸国は、団結して、行動し、自らの原理原則を守る必要がある。
出典:Economist ‘What to do about China’s “sharp power”’ (December 14, 2017)
https://www.economist.com/news/leaders/21732524-china-manipulating-decision-makers-western-democracies-best-defence