世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月16日

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 米国のシンクタンクCenter for a New American Security非常勤フェローのElsa B. Kaniaが、Foreign Affairsウェブサイトの12月5日付けSNAPSHOT欄で、中国は人工知能(Artificial Intelligence、AI)の軍事利用で、急速に米国に追いつきつつある、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。

(iStock.com/Ociacia/michalz86/Purestock)

 米国は技術力で長年軍事的優位を保ってきたが、最近中国の人民解放軍は、米国が力を入れている最新技術に挑んでいる。AIがその最たるものである。

 AIは今後新しい軍事能力を生み、軍の指揮、訓練、部隊の展開を変え、戦争を一変させうる。その変化は大国間の軍事バランスを決めるだろう。

 米国は現在AIで世界をリードしているが、中国は「新世代AI開発計画」を発表し、2030年までにAIで「世界をリードする」との野心的計画を明らかにした。

 いろいろな指標から中国はすでにAI大国といえる。中国は米国に次ぎAI関連特許申請が多く、中国の学者はすでに米国の学者より多くのAI論文を発表している。AI推進協会の2017年年次会議で、中国の研究者は初めて米国の研究者と同数の論文を提出した。中国の官民は何十億ドルもの投資をし、有能な若者を育てる努力をしており、中国は米国を追い越しそうである。

 中国の軍事指導者は、AIが戦争の性質を変えると考えている。AIはいずれドローンの大群を支援することとなるだろう。AIは指揮官が戦場で素早い決断を下す能力を高めるだろう。

 本年6月「中国電子技術グループ社」は、119個のドローン軍の飛行実験に成功した。戦時に中国軍は米国の航空母艦などをドローン群で攻撃できる。

 AIやロボットが戦争で使われるようになるにつれ、中国では戦闘のほとんどを人間のいないシステムで行うことが予期され始めている。すでに兵器の自動化は進められており、例えば米国のパトリオットは、目標のミサイルを自動的に追跡できる。将来はAIが人間より早くサイバーの弱点を見つけ、修正するようになるだろう。

 人民解放軍は、教育程度の高い技術的に有能な人材の確保に苦労している。

 AIは人材に代わってある程度軍事機能を代替できる。

 しかし複雑なAIシステムは高度に訓練された人材を必要としており、そのような人材の確保は容易でない。

 これまでの中国のAIでの進歩に照らせば、米軍部は、中国が急速に米国と同列の競争者になりつつあることを認めるべきである。

 米国は何をなすべきか。

 米政府関係者は、中国の戦略目的の中での人民解放軍の進歩を注意深く検討するとともに、将来の競争力の基礎となる優位を維持すべきである。第一に米政府はAIとその応用についての長期的研究にはるかに多い投資をすべきである。  

 トランプ政権は国家科学財団の知能システム研究に1.75億ドルの支出を提案したが、中国は次世代のAIの研究に今後何十億ドルも支出する計画である。

 第二に人材の確保に万全を期すべきである。世界のトップのAI人材を集めるとともに、高校、大学での教育計画を発展させるべきである。

 そして米国政府は、中国による米国経済の機微な部門への投資や買収の監視を強めるなど、不法な技術移転の防止に努めるべきである。

 米国軍部は中国のAI大国としての登場の挑戦を認め、米国の技術優位が保証されない将来に備えるべきである。

出典:Elsa B. Kania,‘Artificial Intelligence and Chinese Power’(Foreign Affairs, December 5, 2017)
https://www.foreignaffairs.com/articles/china/2017-12-05/artificial-intelligence-and-chinese-power

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