チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年2月7日

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山口亮子 (やまぐち・りょうこ)

ジャーナリスト

2010年京都大学文学部卒業、2013年北京大学歴史学系大学院修了、時事通信社を経て16年よりフリージャーナリストとして活動。

5.中小都市

 「北上広深」と呼ばれる北京・上海・広州・深圳を中心に大都市をターゲットとしたサービスは大量に存在し、レッドオーシャン化している。ブルーオーシャンは中小都市。都市化のスピードが世界で最も速い国の一つとされる中国で、都市化の途上にある中小都市では市場のパイが拡大を続けている。スタートアップの急成長を実現する格好の場なのだ。

 「一番のターゲットは中小都市。そもそもネイティブの英語教師はほとんどいないし、英語をきちんと教えられる先生も少ない。でも親は非常に教育熱心で、月収10万円ほどの家庭で英会話に8000円の月謝を払ったりするんです」

 前回紹介したB2Bの英語教育の清成教育の三澤公希が狙うのは、中小都市。英語をきちんと教えられる教師がいない。一方で親はレベルの高い英語教育を子供に受けさせたがっている。そんな地方の需給のミスマッチを解決しようというのだ。授業の導入先は、幼稚園と学童保育を行う事業者だ。

清成教育の授業風景。アメリカ在住の英語教師と子供たちが直接やりとりする(清成教育提供)

競合少ない一方で消費は旺盛

 中国の学童保育は日本とは異なるので解説したい。中国の小学校では給食がなく、昼食を外で食べなければならない。加えて、宿題の量も膨大。専業主婦の家庭でない限り、とても自分たちで子供の面倒を見ることはできない。共働きが一般的なので、低学年の子供のほとんどが学校の周辺にある学童保育の施設を利用している。学童保育では、昼食、夕食、宿題の面倒を見てくれる。通常一つの小学校の周りに多数の学童保育の事業者が存在する。

 三澤はこうした学童保育の施設に英会話の授業をパッケージで導入しようとしている。宿題と食事の世話をしてくれるだけだった学童保育をグレードアップさせ、ライバルの学童保育と差をつけさせようとしているのだ。

 英会話の授業を導入する場合、学童保育の事業者がすることといえば、オンライン授業のためのインターネットの接続環境と、モニターやマイクなどの設備を整えること。加えて、授業をよりスムーズにするために補助的なチューターのような役割を担う先生を一人配置するだけ。授業の進め方は清成教育が管理し、チューター役の先生が授業をどうサポートするかはマニュアル化されている。この先生には高い英語レベルは求められないので、同社のパッケージはどこでも導入可能なのだ。 

 「地方でも北京と同じレベルの英語教育ができるのが強みです。親は子供を学童保育に入れてさえおけば、毎日一定時間の英会話教育を受けさせられる。毎日英語に浸る時間があるので、週に1回程度しか通わない英会話教室よりも教育効果が高い」

 授業を行っているのは北京、上海、西安、安徽省など計10カ所。6~10人程度のグループ学習のため、一人の英語教師に払える授業料はマンツーマンに比べて高くなる。そのため、優秀な教師をヘッドハンティングでき、授業のレベルが上がり、同社の評価も上がるという好循環が生まれている。

 三澤が担当するのはプロダクトの開発。中国人パートナーが営業や対外的なPRを担当している。本部のある北京のコア社員は10人で、地方都市にブランチも持つ。三澤自身、授業の効果を確認するために安徽省寧国市という総人口38万人ほどの地方都市のブランチを月に数回訪れる。今後、営業を強化し「新たに授業のパッケージを導入するところを年に最大で120スペースのペースで増やしたい」と右肩上がりの成長を誓っている。

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