中国メディアは何を報じているか

2018年1月26日

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 夫が会社の運営上つくった負債を妻が返済する必要があるのかどうか――中国で昨年暮れから今月にかけて、こんな論争が巻き起こった。死んだ夫の負債2億元(約34億円)を返済するよう裁判所に命じられた妻の反論が大きく報じられたためだ。社会問題化し、最高法院(最高裁判所)が新たな解釈を出す事態になった。

(iStock/z_wei)

 日本では夫や妻が配偶者の借金を負う必要は、保証人になっていない限り、ない。妻が保証人でもないのに夫の借金を負わされるというのは、理不尽極まりないと多くの人が感じるだろう。ところが、中国では夫婦で負債を連帯して返すという規定がある。

 論争を巻き起こしたのは、中国で有名な映像製作会社の小馬奔騰(ギャラピングホース)の創業者の妻だった。同社はテレビドラマや映画でそれなりにヒットを生んでおり、かつてはハリウッドのCG大手を買収するなど勢いがあった。だが、2014年に創業者の李明が心筋梗塞で急死。経営は一気に悪化した。

夫が死んで借金まで負わされた妻の怒り

 特に会社を危機に陥れたのが、李明のつくった負債だった。2011年に上場前の最後の融資として、7.5億元(129億円)を調達したのだ。これは当時の中国の映像・映画業界で最大の融資だった。このときに建銀文化産業投資基金(天津)有限公司(以下、建銀文化)は4.5億元(78億円)の投資をし、小馬奔騰の2番目の大株主になった。

 問題は、このときに建銀文化と李明ら役員が「投資補足協議」として、リスクの高い協議書を交わしていたことから起こった。その内容は、小馬奔騰が13年12月31日以前に上場しなければ、建銀文化は小馬奔騰か、実質の経営者あるいは協議を結んだ人間(李明を含む)のいずれかに、所持する小馬奔騰の株式を一度に購入するよう任意の時期に要求できるという内容だった。

 李明としてはよほど上場に自信があったのだろうが、事態は彼の思うようにはいかず、期限までに上場ができなかったうえに、期限切れから間もない翌14年1月2日に本人が急死してしまった。17年10月には同社の株は競売にかけられ、評価額はわずか3.8億元だった。

 会社の価値が暴落する一方、建銀文化と結んだ協議は効力を発揮し、李明らは建銀文化に対して6.35億元の債務を抱えることになった。建銀文化は李明の負債の支払いを妻の金燕に求め、裁判を起こした。

 17年9月下旬、北京市第一中級人民法院は金燕に対し、2億元の範囲内で李明の株式買い取りの責任を負う必要があるとの判決を出した。これは婚姻法の司法解釈(二)第24条に基づいた判断。その内容とは、債権者が婚姻関係のある期間に夫婦の一方が個人の名義で負った負債の権利を主張するなら、夫婦が共同で債務の処理をしなければならないというものだ。

 金燕は負債につながる協議書の存在を知らなかったし、自分で事業を営んでおり、小馬奔騰の経営にはかかわっていなかった。それでも、この婚姻法の司法解釈(二)第24条では配偶者の負債を引き継ぐという結論に至ってしまうのだ。

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