世界の記述

2017年11月1日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所・上席主任調査研究員

1977年早稲田大学政治経済学部卒、アジア経済研究所入所。駐中国日本大使館専門調査員、中国社会科学院工業経済研究所客員研究員、アジア経済研究所地域研究センター長、JETRO上海センター所長などを経て現職。

 中国の金融情勢にとって、地方財政の悪化が国有企業財務の悪化と並ぶ大きなリスク要因であることはすでに「常識」となっている。最近明らかにされた地方財政のデータから、具体的に問題点を整理する。地方財政悪化がリスク要因である第一の理由は、その債務残高が大きいことである。7月末の財政部記者会見によれば、2016年末における債務残高は15・3兆元(約260兆円)、債務率(地方財政収入に対する債務比率)は80・5%に達している。

 第二の理由は、その増加抑制のめどが見えないことだ。中央政府は地方政府債務について、①その性質や影響範囲、危険度などを基準に分類して管理強化する、②短期債務を長期債務に借り換えさせる、③条件に合う地方政府には新たな地方債の起債を認める、などの措置を取り徐々に財政規律回復を図っているが、②③のための地方債発行額は16年に6兆元で、対前年比でほぼ倍増した。

 第三の理由は、地方政府債務が中央政府財政を次第に圧迫していることだ。中央政府は上記の過程で債務保証を与えている。こうして中央政府予算に「組み込まれた」債務は12兆元で、中央・地方政府合わせた政府総債務残高は27・3兆元(約465兆円)、債務率(同年のGDPに対する債務の比率)は35・7%となっている。先述の記者会見で財政部は、この比率は「EUが〝警戒ライン〟としている60%より低く問題ない」としたが、17年の地方政府債務残高は18・8兆元に増加する見込みで、楽観を許さない。

 第四の理由は、政府部門全体の借金が膨らむことで民間の資金繰りが圧迫される「クラウディングアウト」の恐れがあることだ。事実、地方政府債の総額はすでに一般金融債の額を超えており(中国の証券会社レポート)、その兆候が見えている。ほとんどが国有である銀行にしてみれば、地方政府債を優先的に引き受けざるを得ず、その分、国有企業・民間企業に貸し出す資金は減ることになる。

(iStock.com/alfexe/Dmitr1ch)

 危機感を強めたIMF(国際通貨基金)は今年4月に、16年の政府総債務率は46・2%で財政部見積もりより10%以上高く、17年にはこれが49・3%に達するとの推計を公表した。さらには、8月の中国経済に関する年次報告書において、信用膨張に頼る成長を続けると、22年に「政府+民間」の債務合計のGDP比が290%に達すると警告を発している。中国政府がそれをどう受け止めて対応を取るのかが注目されよう。

  
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◆Wedge2017年11月号より

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