2024年12月22日(日)

栖来ひかりが綴る「日本人に伝えたい台湾のリアル」

2018年3月9日

 知人の30歳前後の台湾人女子に、恋愛についての話を振ったらこんな返事が返ってきた。

「最近の台湾の女の子の間では、中国男子と恋愛するのが流行っているんですよ」

 いわく、「一人っ子政策で男性が余っているので、女の子にマメで家事全般得意」かつ「経済的に豊か」なのがポイントらしい。日本人の筆者からすれば、台湾人男性が既に結構マメという認識があるため、それ以上にマメな男性と言われても想像しづらいが、懐具合についていえば「22K」(新卒月給が22,000台湾元[=日本円で約8万円]しかないの意)と揶揄されるほど低賃金が社会問題化している台湾に比べて、中国都市部での給与はどんどん上昇しているのだから、さもありなんだ。

Tomwang112/iStock

 世界史上最長といわれた戒厳令下で民主化が進んだ1980年代以降に生まれた台湾人は、「台湾の現状はすでに独立主権を持った国家である」という台湾人アイデンティティーを生まれながらにして持っており、「天然独」と呼ばれる。この「天然独」、2014年に立法院が占拠された「ひまわり学生運動」を担ったことで知られる存在となったが、最近、そんな天然独世代(台湾のミレニアル世代)にふたたび注目が集まっている。

過去10年で最低を記録した「独立賛成」、失速の背景とは?

 中国はこれまで、ビジネスによって台湾を政治的に囲い込む「以商囲政」という政策を進めてきたが、最近とみに、中国で就労したいと思っている台湾の若者向けの優遇策が次々と発表されている。内容は、「台湾の入試で一定レベル以上の点数を取れば、中国の大学へ進学できる」「台湾の学生を対象に卒業後の就職支援をしたり、奨学金を増やす」といったもので、経済成長しつづける中国へ台湾の若者を取り込む狙いだ。

 月刊雑誌『遠見』の世論調査によれば、台湾の「独立」に賛成する割合は、今年の1月に過去10年間で最低の21.1%を記録した。ひまわり学生運動の時には過去最高の30.3%だったことを思えば、数値は3分の2まで落ち込んでいる。台湾の就労環境や経済の先行きに失望している台湾人が中国へ高い魅力を感じている事が主な理由として挙げられるが、それに加えて筆者は、中国政府が長年じっくりと煮詰めてきたエンターテインメント部門など文化的方面での融合政策が、じわじわ効いてきているのではないか、と感じる。

「流行語大賞」にも色濃く表れた中国の影響

 いま台湾でも大ブームとなっている日本のゲームアプリ「旅かえる」に火をつけたのは中国のユーザーだった。「旅かえる」が生まれた日本ではほとんど話題になっていないにもかかわらず、だ。そういった中国の流行がすぐさま台湾にも飛び火する流れ(またはその逆)は既にできていて、それは台湾の流行語にも表れている。

 2017年末に台湾のグーグルが発表した流行語大賞ベストテンのうち、中国のラップバトル番組「中國有嘻哈」(嘻哈=ラップの意)から生まれた2位の「Freestyle」、10位の「我覺得可以」(イケてると思う、という意)ほか、3位の「~不要不要的」(すごく~でたまらないの意)など、3つが中国のネット由来で、日本由来のものは全くない(9位の「嚇到吃手手」は、日本docomoのCMのキャラクター由来ではあるのだが、日台共通の認識とはいえない)。


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