海野素央の Love Trumps Hate

2018年3月23日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプ対モラー」です。ドナルド・トランプ米大統領は、自身のツイッターを通じて初めてロバート・モラー特別検察官を名指しで批判しました。ロシア疑惑の捜査を率いるモラー特別検察官が、「トランプ・オーガニゼーション」にロシア関連の資料をすべて提出するように要求したと、米メディアは報じたのです。

 以前、米メディアとのインタビューの中でトランプ大統領は、捜査が過去のビジネスに及んだら「レッドライン(超えてはならない一線)を超えたと思う」と語りました。同大統領は、モラー氏による捜査範囲の拡大及びロシア疑惑に関する世論調査結果にかなり危機意識を抱いているのでしょう。

 本稿では、まず政治グッズの専門店で販売されているロシア疑惑関連の商品を紹介します。次に、米国民は「トランプ・モラー両氏のどちらに信頼を置いているのか」「2016年米大統領選挙におけるロシア介入が選挙結果に影響を及ぼしたと考えているのか」「トランプ政権が次の選挙におけるロシア介入に対して十分な対策を講じているとみているのか」に関する米調査機関による世論調査の結果について述べます。そのうえで、トランプ・モラー両氏の生き方及び考え方を比較します。

プーチン大統領とトランプ大統領のマスク

ロシア疑惑と政治グッズ

 先月下旬、ワシントン郊外にある政治グッズの専門店を訪問すると、2016年米大統領選挙におけるトランプ陣営とロシア政府の共謀疑惑、いわゆる「ロシアゲート」を揶揄したグッズが販売されていました。最も印象に残ったグッズは、「トランプ・ペンス」ではなく、「トランプ・プーチン」と印刷された2020年米大統領選挙のTシャツと帽子です。

2020年米大統領選の帽子

 次の大統領選挙でトランプ大統領と組む副大統領候補は、マイク・ペンス氏ではなく、プーチン露大統領になっていたのです。トランプ支持の帽子をかぶりウインクをしているプーチン大統領のTシャツも、実にユーモアに富んでいました。

2020年大統領選挙トランプ・プーチン

 これらに加えて、専門店にはトランプ・プーチン両氏の顔を模したマスクや親指を立てて「トランプ、いいぞ」というメッセージを発信しているプーチン人形も店頭に並んでいました。米国社会におけるロシア疑惑に対する関心の高さをうかがうことができます。一方、「ロケットマン(金正恩北朝鮮労働党委員長)」関連のTシャツや帽子は見当たりませんでした。

 次にワシントン特別区にある書店を訪れると、1月に出版されたトランプ政権の暴露本『炎と激怒』が『ウォーターゲート』の隣に平済みなっていました。米メディアは、トランプ大統領がモラー特別検察官を解任する可能性について論じる際、ウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領と、同元大統領に解任されたアーチボルド・コックス独立特別検察官の事例を出します。ただ、米国の暗黒時代を想起させるウォーターゲートは国内の政治スキャンダルであるのに対して、ロシアゲートはどちらかと言えば外国政府による大統領選挙介入と共謀が焦点になっており、国家安全保障問題として扱われています。

 トランプ大統領は、ロシアゲートに対する国民の不信と厳しい目をオバマ前政権に向けようとしています。その際、オバマ前政権が16年米大統領選挙の投票日よりずっと前にトランプ陣営の捜査を開始した点や、ロシア介入に対して何も対策を講じなかった点を取り挙げて、「ウォーターゲートよりも大きな問題だ」と、3月5日のツイッターに投稿しました。

 さて、モラー特別検察官はこれまでに米国社会の混乱を狙って選挙に介入した13人のロシア人と3つの企業を起訴しました。トランプ陣営とロシア政府の共謀が立証されれば、「米国第一主義」を掲げ愛国心に訴えてきたトランプ大統領は、米国民から「国家反逆者」とみられることは避けられません。その時、「トランプ・プーチン」関連の新たな政治グッズが登場することは間違いありません。

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