公立中学が挑む教育改革

2018年3月26日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

着任初年度から学校の課題を洗い出し、次々と解決策を実行していった工藤勇一氏。現場で改革と向き合う教員たちの胸にはさまざまな感情が沸き起こっていたという。工藤氏はどのようにリーダーシップを示し、「メンバー」の意識と行動を変えていったのか。麹町中学校に勤める4人の教諭に話を聞いた。

千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長(中)と4人の教諭

あなたの子育てが間違っていたわけではない

「不登校の生徒全員と面談をしたい」

 着任したばかりの工藤氏がそう話すのを聞いて、主任養護教諭の新橋典子氏は驚きを隠せなかった。当時は赴任4年目。「保健室の先生」と慕われる新橋氏にとって、学校になじめず苦しんでいる何人かの生徒がいることは一番の気がかりだった。

新橋典子教諭

「不登校の生徒に対して、学校は担任へ『頻繁に連絡を取るように』という方針を示していました。しかし保護者からは『あまり連絡しないでほしい』と言われるケースもあり、間に立つ教員が対応に苦慮する姿も見ていたんです。何より、最も苦しんでいたのは不登校になってしまった子どもたちとその保護者でしょう。工藤校長が全員と面談すると聞いたときには、驚きと同時にうれしく思いました」(新橋氏)

 学校へ行かない我が子に対して親は有効な言葉をかけることができず、責任感と現実の狭間で悩み、学校側とのコミュニケーションを断ってしまうこともある。だから工藤氏は、担任教諭の代わりに自らが現場へ出て、生徒や保護者との会話の機会を重視した。面談の場では保護者へ「あなたの子育てが間違っていたわけではない」と語り続けたという。

 当然のことながら、保護者は学校の運営姿勢に敏感だ。少しでも「学校のため」「職員のため」という姿勢が見えるとすぐに気づかれ、厳しく指摘される。

「工藤校長は保護者に対して話をするときも『子どもたちのため』という軸がぶれません。だからこそ真正面から意見交換ができるのだと思います。保護者に対して『お母さん、それは違いますよ』とズバッと言うこともある。その後ろ姿に影響された教員は私だけではないと思います」(新橋氏)

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