定年バックパッカー海外放浪記

2018年4月1日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2017.2.25~4.26 61日間 総費用13万2000円〈航空券含む〉)

 2017年2月25日午後2時、上海行き東方航空便は羽田を離陸。上海でニューデリー行きの東方航空便に乗換である。眼下に東京湾が春の陽光に照らされて光っている。離陸して一息つくと脳裏に前年暮れから出発前夜までの慌ただしい日々がフラッシュバック。

ヒンズーの神々へのお供物を売る店@バラナシ

 前年12月23日にボルネオから帰国以来、実家で1人暮らしをしている87歳の老母の問題で忙殺された。兄と妹は月に数回実家を訪問したり、病院に付き添ったりして様子を見ていた。本人が「自分は元気で何も問題ない。今の1人暮らしを今後も続けてゆく」と頑として施設への移転を拒否しているという。兄と妹は老母の意を汲んで、1人暮らしを安全にするための方策を立てていた。ケアマネージャーと相談して週1回の訪問看護や毎日昼食・夕食の宅配を手配していた。

 年明け早々に、嫌がる本人を無理矢理に総合病院の精神科に連れて行った。「年相応の物忘れなど認知症の初期段階」との診断。先生は「1人暮らしはお勧めできませんね」とやんわりと本人にも諭したが、本人は「先生も元気で特に問題はないと太鼓判を押してくれた」と全く意に介さない。

プーリー(揚げ玉)や砂糖漬け果物菓子が並ぶ路地@バラナシ

インド・ネパール旅行出発日までに処理すべき懸案問題

 老母の問題を片付けない限り安心して次の旅に出立できない。インド・ネパール周遊の格安航空券の出発日である2月25日の出発まで1カ月半しかない。その間に実家と自分の確定申告を済ませて、老母を施設に引っ越しさせなければならない。逆算すると相当にタイトな日程だ。

 例年この時期は旅行費用も含めて年間支出と年金等の収入を勘案して家計の年度予算を作成しているが、じっくりと検討する精神的余裕がない。間の悪いことに退職金をつぎ込んだ資金運用が思わしくなく、前年末から資産価値が続落していた。相場を見ながら順次売却して安全資産に転換する必要がある。

聖なるガンガ(ガンジス)に沈む夕日@バラナシ

老人施設は“姥捨て山”か?

 嫌がる当人を車に乗せて、年明けから近隣の施設を1週間ほどかけて十数軒ほど参観して廻った。どこの施設でも案内の人に「私は全く元気で掃除洗濯炊事すべて1人でやっているので、当分は一人暮らしを続けます。でも息子が心配するので、将来の参考までに今日は参観に来ました」と老母は強調する。老人特有の見栄を張っているのだろう。

 交通の便が良く商店街も近く、しかも予算的にも無理のない施設を見つけたが、老母は猛反対。兄と妹と3人で説得するも「姥捨て山に親を捨てるのか。親不孝者!」と怒り狂うという愁嘆場。日を変えて何度か説得を試みるも進展なし。

ガンガで沐浴する人々@バラナシ

老人ホームの体験入居も空振り 

 埒が明かないので、2月14日から3泊4日の体験入居を強行。インド・ネパールの出発予定日まで10日しかない。4日後に車で施設に迎えに行くと「早く家に帰りたい。老人ホームは爺さん婆さんばかりで気が滅入るよ」とスゲない。しかも事前に何度も念を押していた施設のチェックポイントを全く検討していない。提供される食事の評価、従業員の応対、部屋の快適さ、入浴設備、入居者との折り合い、等々について確認すると、「そんなことは関係ないよ。どっちみち老人ホームなんか住むつもりはないから」と怒り出す始末。

銀行口座に金がない!

 数日後、兄妹3人が実家に集まり母親と協議。兄と妹は諦めて現状維持もやむなしという雰囲気である。他方で1人暮らしの意外な問題点が浮かび上がってきた。

 暇なので随時電話でテレホンショッピングを申し込んで代引きで支払っている。認知症が進んでいるのだろうか、同じものを何個も買っている。同じ掃除機が四台も押し入れに入っていた。化粧品や缶詰など無数に段ボールに入れたまま放置されている。

 さらに近所のヤリ手婆さんの口車に乗って数十万円もする高価な浄水器、空気清浄機を購入していることも判明。○○○○〇という以前から怪しいと週刊誌などで報道されていた曰く付きの国際的会員組織である。

 どうにも心配になり預金通帳をチェックしたところ、過去数年間で残高が激減していた。ここに至って当人の意思を無視してでも施設に強行移転を決意。躊躇している兄と妹にも引導を渡して、2月20日に引っ越し業者を手配。兄も妹も予定があると逃げ腰。施設への移転は実質的に1人で進めなければならない羽目に。

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