定年バックパッカー海外放浪記

2018年5月6日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2017.2.25~4.26 61日間 総費用13万2000円〈航空券含む〉

自分探しはエンドレス

 旅先で出会う一人旅の若者の多くは何かしら“自分探し”をしている。インド・ネパールの旅で出会った大学生の大半は将来の人生に明るい希望や確たる目標を持てずに彷徨っているように思えた。

ブッダガヤの日系寺院の寺子屋風景

 サークルやバイトや仲間内の交流で“リア充”するという日常。海外旅行は日常からの逃避で未知の世界でいっときの自由を享受。就職しなければならないが特段やりたいことも見つからない(筆者も白状するとこのような学生であった)。または取り敢えず就職するけれども、数年経って面白くなければ転職すればいいという大学四年生に何人も出会った。

 自分の目標を見つけて真直ぐに生きている日本の若者は少数派であろう。そんな稀有な若者と遭遇するとオジサンとしては嬉しくて応援したくなる。

飛び出せニッポン

ブッダガヤ近郊の寺子屋

 11月4日。デリーのインディラ・ガンジー国際空港に前日深夜に到着、朝になるまで空港のベンチで仮眠。起きて身支度を整えていると邦人青年が同様に近くのベンチで荷物を整理しているのに気付いた。声を掛けると、初めての外国旅行なので緊張と不安で眠れず、朝が来るまでまんじりともせずベンチで横になっていたという。青年は化学を専攻している大学3年生と自己紹介。

 やや神経質で色白の真面目な青年という印象だ。長期旅行を計画している様子で、バックパックの他に大きなスーツケースを持参している。

 聞くと、彼は1年間南インドの大学でインド伝統医学であるアーユルヴェーダを学ぶという。インドの伝統医学を化学的に分析して有効性を実証するというのが彼の留学のテーマ。

小雨に煙る、ネパールのポカラ湖畔のカフェテリア

 日本政府の海外留学支援制度に応募して採用されたので、学費や滞在費は日本政府が負担してくれるという。彼は日本の大学の学費も返済必要な奨学金で賄っている。そしてバイトをしながら生活費を稼いでいる。彼は大学でこの留学支援制度のポスターを見て自分の研究テーマを掘り下げるべく留学を決意したという。お金がなくても自分が学びたいテーマがあれば留学できるという素晴らしい制度である。

 近年日本の若者の「内向き志向」が顕著になる中で日本政府が若者を世界に送り出すために始めた海外留学支援制度のようである。

ポカラ河畔のカフェテリアでビールを注文。ポップコーンがおまけで付いて くるという 幸せ。

 彼は空港近くのゲストハウスで一泊してからバスで南部へ移動するという。餞別として愛用していたコンパス(方位磁石)を渡して握手して別れた。朝から清々しい気分であった。

ネパールの教育格差問題に冷静に取り組む大学3年生

 4月4日。カトマンズのゲストハウスの屋上のテラスで、都内の私大で経済学を学ぶ大学4年生のO君と遭遇。一年間の予定で日本のNPOから教育プログラム構築支援のボランティアとして派遣されてきた。

 途上国でのボランティア活動というと情熱や理念が先行してしまい、どうも上滑りで実効性や費用対効果に疑問を感じるケースも多々あるが、O君は非常に冷静かつ客観的にボランティア活動の問題点を指摘した。

 NGOの多くは経理・財務の専門家がおらず、マネジメントが甘い。資金集めのために目立つ活動をしようとする傾向がある。また専任者にとってはNGOの存続そのものが活動目的になってしまう悪弊等々。

 O君の支援プログラムはネパールの都市部と山間部の教育格差の是正である。ネパールの学制は小学校5年(無償)、中学校2年(有償)、高校2年(有償)。高校卒業資格は全国統一試験で認定される。都市部の合格率は90%だが、山間の農村部では10%以下という歴然とした格差が存在する。

ブッダガヤの市内のラマ教信徒向けにお供物を売っている

 中高教育は有償であり貧困家庭では大きな負担である。都市部は教員の給与も資質も高い。他方で農村部では教員の給与水準が低く、農繁期など教員が無断欠勤して農作業をすることが常態化しているという。

 高校卒業後はカレッジ(日本の高校相当らしい)、さらに大学へ進学するが、高校卒業資格合格証がないと企業への就職やカレッジへの進学の道が閉ざされてしまう。こうした格差を解消するためには授業の均質性を確保する必要がある。そのため農村部の中学校・高校にビデオ教育を普及させるというのが支援プログラムの趣旨である。

 O君の説明を聞いていると、若手の企業の新任駐在員が新規プロジェクトのプレゼンをしているように理路整然としている。

 翌日O君と話して納得した。O君は将来商社マンを目指しており、ネパールの一年も商社マンとしてのキャリアに役立てようとしている。とても21歳とは思えぬ頼もしさを感じた。

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