世界の記述

2018年5月29日

»著者プロフィール
閉じる

宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

1976年、長野県生まれ。18歳で単身アメリカに渡り、ウエスト・バージニア大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。スペインの全国紙「エルペリオディコ」で記者経験後、南仏ペルピニョンとバルセロナを拠点にするフリー・ジャーナリストとして、欧州に止まらず、世界各地を取材し、月刊誌『世界』(岩波書店)、『文藝春秋』(文藝春秋)等で、報道記事やルポルタージュを発表している。共同通信・特約記者を兼務し、フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。著書に、『卵子探しています』(小学館)などがある。

 フランシスコ・ローマ法王は、バチカン(ローマ法王庁)で5月2日、南米チリの教会で幼少期に神父から性的虐待を受けた男性3人と個別に面談し、カトリック教会の名の下、過去の大罪を謝罪した。

(iStock.com/Eucalyptys/speedball)

 1980年代、チリの首都サンティアゴにある教会で、フェルナンド・カラミナ司教(当時)は複数の児童に対し、性的虐待を繰り返した。2011年に聖職を剥奪されたが、法的措置は受けなかった。

 フランシスコ法王は今年1月、チリの大統領府を訪問した際、この問題について触れ、「苦悩と恥辱の気持ちを表明したい」と謝罪。犠牲になったチリ人男性3人を、後にバチカンに招いた形だ。

 3人はフランシスコ法王との数時間にわたる会談後、記者会見で、〝伝染病〟の撲滅を訴えた。「我々は約10年間、教会の性的虐待と隠蔽(いんぺい)について闘い続けるあまり、敵と見なされてきた。(中略)緊急措置を取らなければ、すべてが形骸化してしまう」

 かつて、フランシスコ法王は、「児童への性的虐待は病である」と言及し、「加害者は後悔しながら前進する。我々が許しても、再び実行する」とやり場のない思いを述べた。しかし、ベネディクト16世前法王が、この問題に対する「非寛容政策」を打ち出してから、事態の変化が顕著化している。

 教会関係者から性的虐待を受けた児童の数は、世界規模では明らかになっていなが、各国では捜査が強化されつつある。ドイツでは、1945年~90年代初頭にかけ、49人の教会関係者が少なくとも547人の少年を虐待。オーストラリアでは、80年~2015年までに4444人が性的虐待を受けたという史上最悪の報告が出ている。

 昨年6月には、そのオーストラリアの最高聖職者で、法王庁の財務事務局長官を務めるジョージ・ペル枢機卿が、複数の性的虐待罪で追訴された。同枢機卿は、この行為を強く否定してきたが、5月1日、正式に起訴された。

 聖職者によるこうした事件は、氷山の一角に過ぎず、教会側の黙認や否認などで、これまで多くのケースが隠蔽されてきた。今回、法王と面談したチリ人男性3人は、口をそろえて言う。

 「謝罪は、具体的な行動で示されなくてはならない」

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2018年6月号より

関連記事

新着記事

»もっと見る