世界の記述

2018年4月17日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所・上席主任調査研究員

1977年早稲田大学政治経済学部卒、アジア経済研究所入所。駐中国日本大使館専門調査員、中国社会科学院工業経済研究所客員研究員、アジア経済研究所地域研究センター長、JETRO上海センター所長などを経て現職。

 中国の習政権については、中国共産党や習個人への集権化の問題に関心が集まり、経済運営では市場経済化が後退するのではないかとの懸念が聞かれる。しかし、昨年11月の中国共産党第19回党大会(以下、党大会)や今年3月の第13期全国人民代表大会(以下、全人代)での議論を具体的に検討すると、習政権の別の側面が見えてくる。

(iStock.com/Shaxiaozi/Kora_ra)

 第1に、マクロ経済運営において「消費需要主導による成長」というスタンスは変わっていない。全人代で固定資産投資伸び率の目標は示されず、財政赤字の対GDP比目標も2.6%と前年(3.0%)より引き下げられた。その前提でGDP年成長率は6.5%前後とされている。これは17年実績より低いが、次に示す経済の質・効率の向上を妨げず、かつ雇用の安定を保てる水準として設定されたとみられる。中国の潜在成長率と概ね一致した数値(国家発展改革委の見解)でもある。

 第2に、党大会の議論を受けて全人代でも、①質の高い発展の強力な推進、②改革開放の取り組み強化、③小康社会の全面的実現に向けた3つの戦い(重大リスクの防止、的確な貧困脱却、汚染対策)の勝利、という経済運営の基本方針が示された。

 注目されるのは①において、無駄な生産力の淘汰と並び新たな発展の原動力育成が強調されていることだ。「新興産業クラスター」であるビッグデータ・AI(人工知能)関連、インターネット応用サービス業が筆頭だが、集積回路、第五世代移動通信、航空エンジン、新エネルギー自動車、新素材など「製造強国」を担う産業への支援強化も謳われている。

 第3に、「官民一体」での政策推進を目指している。全人代と政治協商会議の代表にIT企業家が10名選出された。これは前回(5年前)の3人から3倍増であり、政府の意図が見て取れる。民間企業側も政府との協力を深めて新政策に対応できるメリットがある。また、中央政府管轄の中央企業50社が同代表を送り込んでいる。国有企業を柱としつつ新興民間企業も囲い込んで産業政策を推進しようとの構えである。

 第4に、改めて対外開放推進を強調している。特に外資への開放分野として製造業では、一般製造業・新エネルギー自動車、サービス業では、電気通信・医療・教育・高齢者介護のほか、金融(銀行カード決済、保険ブローカー、銀行、証券、ファンド管理、先物取引、金融資産管理)が列挙され、一部の業種では規制緩和策が公表されている。

 習政権は、政府主導型ではあるが、産業の長期的発展を見据えた改革・開放策を推進していくものと予想される。

  
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