今回の震災では、東北地方の沿岸部に位置する製紙工場が、地震や津波による甚大な被害を受け、生産能力の大幅なダウンを余儀なくされている。
三菱製紙の青森県八戸工場では、「工場の1階が浸水し、電気系統に被害を受けた。現状は、5月中旬頃から順次操業を再開する目処を立てている」(三菱製紙広報・IR室)。一方、日本製紙では、宮城県の石巻工場と岩沼工場が壊滅的な被害を受け、「稼動再開の見通しはまだ立っていない状態」(日本製紙CSR本部広報室)だという。
製紙工場の操業停止が各業界に与える影響はきわめて大きい。大量の紙を使用する出版業界は言うまでもなく、コピー用紙やトイレットペーパー、牛乳パックからお菓子の容器に至るまで、私たちの日常生活はさまざまな形で紙によって支えられている。
そして、思わぬところに落とし穴が潜んでいる。
レシート用紙がないと、POSが動かない
関係者によると、「先日、ある小売業者のところで、レジロールがないとPOSレジが動かない。これはまずい、と大騒ぎになった」という。
レジロールとは、レシート用紙のことである。たかがレシート用紙で大袈裟だと思われるかもしれないが、これが欠品すると、小売り業界全体に与えるダメージは想像以上に大きい。
「機種にもよると思いますが、基本的にレジロールがないとレシートプリンターが印字エラーとなり、POSレジは動きません。POSレジが動かなければ、POSシステム(販売時点管理システム)も稼動しないことになります。売上登録機能を備えたハンディターミナル(携帯端末)を持っているところもありますが、すべての店舗ではありません」(POSシステム業界関係者)。
実際、コンビニや弁当チェーンなど、いくつかの店舗に確認したところ、「携帯端末を持っていないので、レジロールがなくなったら電卓で対処するしかない」といった声も聞かれた。
POSが動かないと、何が困る?
レジが動かなければ、会計処理をスムーズに行うことができなくなり、レジに長蛇の列ができることくらいは想像できる。だが、POSシステムが稼動しないと、小売業界は具体的にどのような影響を受けるのだろうか。物流に詳しい鈴木邦成氏(文化ファッション大学院大学准教授)に聞いた。