世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月19日

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 日米豪の防衛相(小野寺大臣、マティス長官、ペイン大臣)は6月2日、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)に合わせて防衛相会談を実施、3国の防衛協力を強化する共同声明を発表した。声明のうち、インド太平洋に関する部分の概要は次の通りである。

(iStock.com/Lena_D/Dio5050/phive2015/nattanan726)

 インド太平洋地域の重要性、自由で繁栄したオープンな国際秩序の支持に果たす3か国の重要な役割を再確認した。主権の尊重、自由で公正な貿易と投資、国際法と国際規範の遵守という共通の原則を明確にした。ASEANが地域において果たす中心的役割への強い支持を再確認した。

 南シナ海の状況に引き続き懸念を持つ。国際法の尊重、南シナ海を含む海洋における航行の自由その他の合法的な海洋の利用への支持を強調。南シナ海における、国連海洋法条約を含む国際法に沿った紛争の平和的解決の重要性を強調し、南シナ海における武力による威嚇、現状の一方的な変更、係争地の軍事目的の利用に強く反対する。ASEANと中国の間で効果的で意味のある行動規範が策定されることの重要性を繰り返す。

 3国の地域における更なる協力強化の重要性を認識。インド太平洋地域における3国協力の長期的ビジョンを与える「戦略アクション・アジェンダ」策定への決意を確認。

 3国の緊密な防衛協力に留意し、海洋能力構築、テロ対策、人道支援、災害対応、平和維持支援などの地域の取り組みについての2国および3国協力の相乗効果を高めることで合意。

 日米豪3か国の防衛相会談は、今回で7回目となる。上記声明は、特に目新しい内容は含んでいないが、中国の南シナ海における行動を厳しく非難するとともに、インド太平洋において日米豪の協力を強化していくとしている。適切な内容である。今後策定するとしている「戦略アクション・アジェンダ」の内容についても注目される。

 日米豪の協力においては、豪州は最大の貿易相手国である中国に対して配慮や遠慮が拭えないのではないかという懸念が若干あるが、豪州の対中警戒路線もかなり確固たるものになってきたように思われる。一つの大きな原因は、太平洋の島嶼国への中国の進出である。

 豪州が中国への警戒を強める理由は、中国の太平洋の島嶼国への進出だけではない。中国は、豪州のメディアを買収したり、政治献金をするなどして、豪州への影響力を強めようとしてきた。昨年、中国から献金を受けていた野党議員が、南シナ海で中国寄りの発言をしていたとして、大きな問題になった。豪州北部ダーウィンには米軍が巡回駐留しているが、そうした港湾や、その他のインフラへの中国の影響力もある。こうしたことから、豪州では、外国の団体からの政治献金を禁止する選挙法改正案が出されたり(今まで禁止されていなかったのが不思議であるが)、安全保障上のリスクを理由に重要インフラへの投資について軽減命令を出せるようにする、重要インフラ保安法を施行することを決定するなどしている。中国側は豪州のこうした動きに反発し、5月のG20に際して行われた豪中外相会談では、王毅外相が「豪州が原因で両国関係が悪化している」と注文を付けている。中国が強く反発することは、かえって中国が豪州への影響力を強めようとしている証左となり、豪州国民の対中警戒感を増大させることになろう。

 ダーウィンへの米軍の巡回駐留は、2012年にオバマ政権下での「アジアへの軸足移動」の一環として始まったものである。現在は1600人規模であるが、数年のうちに2500人に増加すると見られている。米軍の豪州へのプレゼンスも、徐々に、しかし着実に拡大している。

  
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