2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月15日

 米国上院軍事委員会では、4月17日に、ハリー・ハリス米太平洋軍司令官の後任として指名されたフィリップ・デイヴィッドソン提督の公聴会を行った。その中で、デイヴィッドソン次期太平洋軍司令官が、米国とオーストラリア、米国とインドとの関係について述べた部分を、以下に紹介する。

(iStock.com/adekvat/Design Pics)

米豪関係について

・豪州は、100年の歴史をもつ信頼のおける米国の同盟国である。シリア、イラク、アフガニスタンを含む世界中の主要な紛争において、常に米国とともにあった。豪州は、軍事的関与や防衛装備品の購入等を通じて、米国との関係を目に見える形で深め、インド太平洋地域の安定と繁栄に寄与している。また、豪州は、米国の同盟国である日本や韓国とも関係を強化し、インド及びインドネシアとの防衛関係も重視している。米豪同盟は、ANZUS条約に始まり、PACOM(米太平洋軍)での二国間協議、今年3月開催の軍の代表者会議により深化している。これらは、今夏開催の米豪「2+2」を支えるものである。

・米豪軍事関係では、相互運用性が最優先課題だ。豪州は、防衛システムの輸入国として世界第5位で、米国の防衛品輸出先として2位であり、常に米国の防衛装備品購入国として10位以内に入っている。さらに、豪州は、第5世代計画において鍵となる開発パートナーである。10年間で1450億ドルの豪州の防錆装備品計画のうち60%は米国からのものである。PACOMは、米豪間の相互運用性において、訓練や演習を通じ、主要な役割を果たしている。豪州は、地域の安全保障や経済を形成するのに、米国とともに影響力のあるパートナーである。更に、豪州のインドや日本との関係強化は、多国間協力を推進し、地域のルールに基づいた秩序の維持、発展に役立つ。

・豪州は、米国と中国を、最も重要な国と位置付けている。豪州の輸入の21%、輸出の32%は中国とのものである。豪州軍は、中国人民解放軍とも比較的安定した関係を保っている。豪州は、国際法に反する南シナ海等での領土や海洋権益の主張には反対している。中国に対しても、透明性、ルールに基づく秩序の維持や国際規範の遵守の重要性を訴えている。

・米海兵隊のダーウィンへの移転や米豪航空協力の強化等は、戦略上も運用上も重要である。戦略的には、インド太平洋地域への米国の関与を示し、自由で開かれた国際秩序の維持のために米豪同盟が強化される。運用上は、米国と豪州及び他諸国との相互運用性が高まり、危機対応能力、強靭性等も強化される。

米印関係について

・米印間には、海洋問題、海賊対処、テロ対策等の共通の安全保障上の利益があり、その関係は強化されている。合同演習、防衛装備品の輸出入、人的交流等を通じて軍事的関係が進展している。しかし、米印間の相互運用性を高めるなど、さらなる関係強化が課題である。

・この米印間の戦略的パートナーシップをより長期的なものにしたい。優先的課題としては、海洋安全保障協力の強化、陸海空全てでの軍軍関係の拡大、主要な基本的協定の締結、アフガニスタンにおけるインドの貢献の促進及び防衛協力の深化がある。その他、拡散対抗措置、人道援助、災害救助、海賊対処、テロ対策及び共通の脅威に関する情報共有で協力拡大の可能性がある。

・中印関係は複雑である。中国とパキスタンの長年の関係、1962年の中印戦争、長年の国境紛争、資源争い及び「一帯一路構想」が、両国関係を複雑にしている。いまだに続く国境紛争、貿易不均衡及び南アジアや東南アジアにおける影響力の競争は、中印間の不信軽減には役立たない。両国の不信は、地域の安全保障や安定への挑戦となっている。一方、両国は、BRICS、G20、気候変動等の共通の土台を見つけて協力し、自国の経済発展が維持されるように国際貿易ルールを形成しようとしている。

・PACOMとCENTCOM(米中央軍)は定期的に国境をまたいで調整協議をしている。両者は、情報部門や戦闘司令部等、地理的垣根を超えて連携している。米国の南アジア安全保障政策は、軍事的なものばかりではなく、様々な省庁が国務省の南・中央アジア局とともに行うものである。

出典: US Senate ‘Advance Policy Questions for Admiral Philip Davidson, USN Expected Nominee for Commander, U.S. Pacific Command’ (April 17, 2018)
https://www.armed-services.senate.gov/imo/media/doc/Davidson_APQs_04-17-18.pdf)


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