世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月20日

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 2018年2月14日、ハリス米太平洋軍司令官は、米下院軍事員会にてインド太平洋情勢に関して発言した。そのうち中国に関する部分を以下に紹介する。

(iStock.com/claudiodivizia/Creatas/monsitj/9comeback/Onnes)

 中国人民解放軍(PLA)の近代化は著しい。世界一の早さで能力の向上が図られている。2017年10月の第19回党大会で習近平総書記は、軍の発展は国家の優先事項であり、2035年までに近代化を完成させ、2049年までに「世界一流」の軍隊にすると宣言した。おそらくPLAはもっと早く目標を達成するだろう。

 PLAは近年、より統合され、外に向かった軍隊になっている。朝鮮半島情勢が緊迫すると北方軍が半島有事に備えた訓練をしたり、昨年の夏から秋にかけては中印国境地帯で西方軍が活発な動きを見せたりした。

 PLAの中で最も進んだ分野は弾道ミサイルである。特に中距離弾道ミサイル(IRBM)の向上は著しく、中国のミサイル全体の95%を占める。ミサイルのうち、近距離は台湾と洋上の米国空母戦闘部隊を、中距離は在日米軍基地とグアムを、そしてICBMは米国本土を狙っているのが分かる。更に、中国が今後数年間で超音速ミサイル技術を取得すれば、それはより大きな挑戦になる。

 中国海軍(PLAN)は、建艦計画を拡大させている。この計画が進めば、中国はロシアを抜いて2020年には世界第2の海軍大国になる。中国初の055型ミサイル発射巡洋艦は、2017年6月に竣工した。来年には他の複合艦隊とともに運用される。そして、少なくともあと4隻は同型の戦艦が建造中である。052型ミサイル発射型駆逐艦は既に6隻就航中で、更に7隻が建造中である。また、水陸両用能力も向上している。2017年10月、中国は、空母を支援する初の後方支援艦となる901型高速戦闘支援艦を就航させた。中国海軍2隻目の空母は大連で進水式を済ませ、順調に洋上試運転をしている。新たな潜水艦の建造には、039A型5隻と093型攻撃型原子力潜水艦4隻が含まれる。これら全ての艦船が、優れた通信設備や防衛システム、そして射程が長く殺傷力の強い兵器を搭載している。

 中国空軍や中国海軍の航空戦力にも幾つか特記すべき進展がある。それはより洗練された訓練にみることができる。数年前に日本海や南シナ海で爆撃機が訓練していた時は基礎的なものにすぎなかったが、今では戦闘機、空中給油機等を用い総合的訓練になっている。J20多機能戦闘機も、開発段階から運用段階に入っている。J31の計画は思ったほど早くは進んでいないが、それでもこの2種類の戦闘機計画で、中国は数年内に第5世代戦闘機の能力を確実なものにするだろう。少なくとも2機の重量輸送機(Y-20)の導入は、PLAが兵力や装備品を中国全土や世界中に移動させるのに役立つだろう。

 PLA陸軍(PLAA)は統合再編中である。この再編によりPLAAはより柔軟に様々な事態に対応できるようになる。PLAN等の戦力も拡大している。2旅団が8に増え、2旅団ずつ各戦区に配置される。PLA初の海外基地ジブチにもPLAN等は昨夏から駐留している。

 2015年の設立以来、PLA戦略支援部隊(PLASSF)は、サイバー、宇宙等の分野で活躍してきた。PLASSFは、その専門能力で、他国の宇宙、電気、通信及びデータ網システムの利用を妨害できる。PLAは、システム戦で勝とうとしているのである。

 このような新しく拡大された能力を実現化するために、PLA、特に海軍は、より様々な地域で、より頻繁に、より高度な訓練を行っている。PLANのアデン湾における海賊対処行動は9年目に入り、隊員たちの貴重な経験となっている。中国の潜水艦は、この4年間で7回インド洋に展開し、中国艦船は、欧州、アフリカ、中東及びアジアの各所で、何十回と寄港している。PLANの存在感と影響力は着実に増加している。活動の多くは、中国の野心的一帯一路構想と結びついている。それは、中国中心の貿易網を通じて、中国の世界的影響力を拡大しようとするものである。中国の行動の一部や閉鎖性には、懸念材料もある。例えば、昨年のジブチの基地開設は、後方支援基地とされていたが、PLANは、開設間もない数か月に装甲車や大砲も使用した火力演習を数回行った。このことは基地が単なる後方支援のためのものではなく遠征軍の前方展開基地としての機能をもつことを示す。

 先般、議会では、外国投資リスク検討近代化法が提出された。これは国家安全保障を高めるものである。米国及びインド太平洋地域における軍事施設付近の不動産を含む中国の投資は、米国及び同盟諸国等の安全保障を脅かす。我々は議会の活動を支持するとともに、中国からの投資を包括的に検討し中国の意図を理解すべきであろう。

出典:‘STATEMENT OF ADMIRAL HARRY B. HARRIS JR., U.S. NAVY COMMANDER, U.S. PACIFIC COMMAND BEFORE THE HOUSE ARMED SERVICES COMMITTEE ON U.S. PACIFIC COMMAND POSTURE’February14, 2018)

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