世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月9日

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 2月16日から18日まで、第54回ミュンヘン安全保障会議が開催された。ドイツのガブリエル外相は、同会議での演説の中で、中国が自由主義秩序に代わる自国の利益を追求する世界秩序を構築しようとしている、と指摘し、それに対抗するために自由主義陣営が協力することの重要性を説いている。概要は次の通りである。

(iStock.com/ChinKS/123dartist/Diana Taliun/ruksutakarn)

 今や国際政治において、予測可能性と信頼性は極めて小さくなっているように見える。

 中国の指導力増大への野望、ロシアのパワーの主張、ナショナリズムと保護主義の台頭は、世界の秩序に予期し得ない大変化をもたらしつつある。

 我々は、運命のなすがままにされるのではなく、未来を自ら作り出すべきである。ドイツにとって最も重要な課題は次の二つである。第一に、欧州を強化する。第二に、米国とEUの協力を再び強化、改善する。

 欧州も米国もそれぞれ単独では世界での影響力を維持できず、互いにパートナーがいて初めて可能となる。米国は、欧州との協力が欧州だけでなく米国の利益にもなることを理解すべきだ。

 戦後の自由主義秩序は完璧ではないが、今思いつき得るものの中では最善である。今日、自由は再び危機に瀕している。我々は、国際的な法の支配を強化することによってのみ、強者の支配から逃れ得る。

 自由主義秩序の構造が揺らぎ始めた場所では、それに代わるものが構築され始めることになろう。

 中国の台頭は、バランス・オブ・パワーの大きな変化をもたらす。新シルクロード構想は、ドイツ人が信じているようなものではない。すなわち、マルコ・ポーロへの感傷的な賛辞などではなく、世界を中国の利益になるように形作るための包括的なシステムを構築する企てである。単なる経済的問題ではない。中国は、我々の西側モデルに代わる、自由、民主主義、人権に基づかないシステムを作ろうとしている。

 中国は現在、世界で唯一、グローバルな地政学的戦略を持った国のように思われる。私はそのことで中国を批判したいとは思わない。中国にはそういうコンセプトを発展させる権利がある。

 我々「西側」は、調整に基づく利益とゼロ・サム・ゲームに基づく利益とのバランスを見出す自らの戦略を持っていない点を、反省しなければならない。

 私は、米、欧州、その他の国々の協力が、自由主義秩序の構造の維持を約束してくれる唯一の道であると信じる。それは、欧州の利益にも米国の利益にもなることである。

出典:‘Speech by Foreign Minister Sigmar Gabriel at the Munich Security Conference’, Federal Foreign Office, February 17, 2018)

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