世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月20日

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 米国防総省は1月19日、10年ぶりに「国防戦略(NDS)」を発表した。今回のNDSは、中露を名指ししつつ「今や安全保障上の関心事はテロではなく国家間の戦略的競争である」と明確に記述し、注目を浴びた。公開版のサマリーのイントロダクションが、今回のNDSの思想をよく表しているので、以下にその要旨を紹介する。

(iStock.com/utkamandarinka/-1001-/Kilav/prudkov)

 我々は、長年続いたルールに基づくグローバルな秩序の衰退に特徴づけられる、世界的無秩序の高まりに直面している。今や、テロではなく国家間の戦略的競争が、米国の国家安全保障上の主要な関心事である。

 中国は、南シナ海の地形を軍事化しつつ近隣国を略奪的経済手段で脅迫している、戦略的競争相手である。ロシアは、近隣国の国境を侵し、近隣国の経済、外交、安全保障上の決定に拒否権を獲得しようとしている。国連による非難、制裁にも拘わらず、北朝鮮の無法な行為と向こう見ずなレトリックは続いている。イランは、暴力の種をまき続け、中東の安定にとり最大の脅威となっている。ISISは、物理的なカリフ国としては打倒されたが、テロ組織としては存続している。

 急速な技術革新、あらゆる作戦領域における敵からの挑戦、米国史上最長となる武力紛争に起因する軍の即応体制への影響が、複雑さを増す安全保障環境を定義づけている。こうした環境では自己満足は許されない。我々は、殺傷力の高い、弾力性のある、迅速に適応できる統合軍を展開するために何が最も重要なのか、困難な選択と順位付けをしなければならない。米軍は今や、戦場で勝利を約束されてはいない。

 より殺傷力の高い、弾力性のある、革新的な統合軍が、強固な同盟・パートナーと相まって、米国の影響力を維持し、自由でオープンな国際秩序を守るのに好ましいパワー・バランスを保証することになろう。我々の軍の態勢、同盟およびパートナーシップの構造、国防総省の近代化が相まって、紛争における優位と力を通じた平和の維持に必要な能力を提供するだろう。

 この戦略に失敗すれば、米国のグローバルな影響力は低下し、同盟国・パートナー国の間の調和は損なわれ、市場へのアクセスが低下し、我々の繁栄は衰退することになる。我々の軍の即応体制の回復と近代化のための持続的で予測可能な投資がなければ、急速に米軍の軍事的優位は失われる。

出典:‘Summary of the 2018 National Defense Strategy of The United States’, United States Department of Defense, January 19, 2018)

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