世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月7日

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 トランプ大統領は、次期太平洋軍司令官にフィリップ・デイヴィッドソン海軍大将を指名しているが、4月17日、その指名公聴会が米上院軍事委員会で行われた。ここでは、そのうち中国に関連する部分を紹介する。デイヴィッドソンの対中認識は、常識的であり、安心できる内容であると評価できる。

(iStock.com/GlobalP/WestLight)

 「国家安全保障戦略」で述べられている通り、米国は、国際法、航行の自由、商業と思想の自由を支持する地域のパートナー国と同盟国の支持を得て、自由で開かれたインド太平洋を提唱している。中国は、自らの権威主義的で上記考えに反するモデルに沿った世界を作り出そうとしていることが、ますます明らかになってきている。中国は、威圧的外交、略奪的経済政策、急速な軍拡を通じ、ルールに基づく国際秩序を掘り崩している。我々は、中国のそうした行為に対し、臆すことなく継続的に対抗しなければならない。

 中国は、地域への米国のアクセスと影響力を減らす長期戦略を追求しており、既にそれに沿って大きな成功を収めている。中国はもはや台頭する勢力ではなく大国であり、地域で米国と競争する対等の勢力である。2018年の一般教書演説でトランプ大統領は中国を「ライバル」と呼んだが、私(デイヴィッドソン)も全面的に同意する。 

 中国は、インド太平洋において、米国を安全保障上のパートナーとしての選択肢から除外し、取って代わろうとしている。人民解放軍は、急速な国防予算の拡大により世界で最も野心的な軍の近代化を図ろうとしている。人民解放軍は、先進的なプラットフォーム、対艦ミサイル、米国と同盟国の基地を標的とし得る中距離弾道ミサイル、サイバー・宇宙能力、極超音速兵器を含む、長距離打撃力に焦点を当てている。これらは、米国を第一列島戦の外側に追いやり、中国の近隣諸国を孤立させ、米国による中国周辺における地域紛争への介入を阻止することを目標にしている。 

 地域における米国の同盟とパートナーシップを侵食しようとの中国の明確な意図も懸念される。中国は「冷戦の遺物」と呼ぶが、我々の同盟とパートナーシップは、過去70年にわたりインド太平洋地域の安定の礎であり、今後とも我々の国防戦略の中核であり続ける。

 南シナ海における軍事施設建設により、中国は何千マイルも南に影響力を拡大し、オセアニアまで兵力を投射できるようになるだろう。米軍のプレゼンスにも対抗できようし、主権を主張する他の南シナ海沿岸国を軍事的に容易に圧倒できよう。中国は、今や、米国との戦争以外のあらゆるシナリオにおいて、南シナ海を支配する能力がある。 米国は、外交的手段で紛争を解決するよう勧奨し続ける。安定を維持するには、航行の自由作戦を含む、南シナ海における米国の定期的な作戦を続けなければならない。私の考えでは、海空で少しでもプレゼンスが減るようなことがあれば、中国の拡張を許すことになる。         

 一帯一路構想(BRI)については、融資や関連事業の略奪的性格を考えれば、私は、中国は各国を威圧し中国の影響下に置こうとする道具として使っていると信じる。BRIは、中国軍を海外の空軍基地、港湾にアクセスさせ、世界中に到達する機会を与えるものである。中国軍は、南シナ海からアデン湾に至るまで、打撃、偵察が可能になるだろう。中国は、米軍基地、米軍との共同行動などを阻止するための圧力としてもBRIを用い得る。それは、米国が国際秩序と規範を維持することを困難にさせる。

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