世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月2日

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 昨今の台中関係を鑑みるに、潜水艦は台湾の中国に対する抑止力を高めるためのカギとなる存在の一つである。航空戦力は既に圧倒的に中国側が有利であり、中国から台湾への攻撃があった場合、単純に両国間の戦力差を比較すると台湾は2,3日で制空権を失うと言われている。これに関しては台湾の中国に対する、「A2AD(接近阻止・領域拒否)」的な能力の向上が重要であるが、実現には新鋭の潜水艦が不可欠である。しかし、現在台湾が保有する4隻の潜水艦(2隻は米国製、2隻はオランダ製)は、老朽化が進んでいる。これに対し、中国は約60隻もの潜水艦を保有している。

(iStock.com/peterotoole/athuristock/alblec/sunstock/ sunstock/tumdee)

 2001年に米国のブッシュ(子)政権は、台湾に8隻のディーゼル推進式潜水艦の売却を決めたものの、結局、実現していない。そこで蔡英文政権は米国からの購入を断念し、自主建造に方向転換、2026年までに1隻目を就役させることを目指している。台湾の王定宇・立法院議員は、台湾の海中戦闘能力向上のための防衛計画は10年前に始まっていて然るべきものであり、潜水艦建造は既に予定より20年遅れている、と強い懸念を示している(4月9日付、台北タイムズ)。また、船体は自主建造できるにせよ、エンジン・武器システム・騒音低減技術等は海外から導入する必要がある。

 状況を俯瞰すると、米国から台湾に潜水艦技術が供与されることが望まれる。この点、4月9日、台湾国防部は、台湾の潜水艦自主建造計画を支援するために米企業が台湾側と商談をすることを米政府が許可したと明らかにしている。台湾の経済団体「台湾国防産業発展協会」は、5月10日に台湾南部の高雄市で「台米国防産業フォーラム」を開催し、米国の軍事企業と技術協力について議論するとしている。同フォーラムでは、艦船の製造、宇宙空間・サイバースペースの安全に重点が置かれ、米台間でハード・ソフト両面での協力が推進される予定だ。米国からロッキード・マーチン社など15社以上が参加する。これを機に、潜水艦技術の輸出についても商談が進む可能性もある。

 ただ、商談が成立したとしても、実際に輸出されるには米政府の許可が必要となる。この点は不透明な要因ではあるが、最近の米国の潮流は台湾への武器供与に積極的になっているように思われる。2016年7月、米議会では、台湾関係法と「6つの保証」(1982年にレーガン大統領が発表)を米台関係の基礎とすることを再確認する両院一致決議が採択されている。台湾関係法は、台湾防衛のために米国製の武器を供与することを定めている。「6つの保証」の内容は、1.台湾への武器売却の終了時期は合意されていない、2.台湾と中国の間で米国が仲介することはない、3.台湾に中国と交渉するよう圧力をかけることはない、4.台湾の主権に関する立場を変更することはない、5.台湾関係法の規定を変更することはない、6.台湾への武器売却決定に当たり事前に中国と協議することはない、となっている。トランプ政権は、昨年6月、14億ドル相当の武器を台湾に売却すると議会に通知し、同12月に発表された米国の「国家安全保障戦略」では、台湾関係法に基づく台湾への武器供与が明記されなどしている。

 台湾は、日本の潜水艦技術にも強い関心を持っていると言われている。日本の潜水艦技術は世界でもトップクラスであり、特に騒音軽減技術が優秀である。台湾が最新鋭の潜水艦を導入することは、日本の安全保障にとっても当然プラスになる。

  
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