Washington Files

2018年4月23日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。現在、神田外語グループ参与。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 金正恩朝鮮労働党委員長が突如、核・ICBM実験中止と豊渓里核実験場閉鎖措置を打ち出したことで、米朝首脳会談の展開にいよいよ世界中の関心が集まってきた。果たしてふたを開けた結果は、日本を含む西側諸国全体にとって真に納得のいくものになるのか、それとも、とりあえず米朝両国の当面の利益を最優先した“帳尻合わせ”と外交演出で幕引きとなるのか、まったく予断は許さない。ここでは会談自体の想定されるいくつかのシナリオについてズームアップしてみる。

(ANNECORDON/ISTOCK)

第1のシナリオ = 米中接触モデル

 1972年2月、ニクソン米大統領が、キッシンジャー国家安全保障担当大統領補佐官(いずれも当時)らを伴って大統領として初訪中、1週間の滞在中、毛沢東主席、周恩来首相ら中国側の最高首脳らと会談した。会談の最大の成果は、それまで国交のなかった両国の主張と共通認識、努力目標を盛り込んだ米中共同コミュニケいわゆる「上海コミュニケ」の発表だった。

 同コミュニケには、1、両国関係正常化に向けての進展がすべての国の利益となる。2、両国は国際的軍事対立の危険軽減を希望する。3、米中そして他のいかなる国もアジア太平洋地域において覇権を求めない。4、両国とも双方のいずれかにとって敵対的となる合意や理解を他の第三国との間で交渉しない―などの内容が盛り込まれた。

 しかし、双方がただちに行動を起こすべき具体的措置や取り決めは何もなく、両国が実際に国交樹立に至ったのは、7年後の1979年1月だった。

 このニクソン訪中は、キッシンジャー氏による2年近くの根回しと両国当事者の準備をへて実現したものだったが、それでも具体的な成果を導き出すまでには至らなかった。

 その点、今回、6月上旬までに開催が予定されるトランプ大統領と金正恩委員長との首脳会談の場合、わずか1カ月前に北朝鮮側から韓国政府経由で提案され、トランプ大統領が即刻受理して開催の運びとなったものであり、会談で具体的な合意内容にまで踏み込むためには余りにも時間がなさすぎる。

 にもかかわらず、双方にとって歴史的な会談に臨む以上、握手と笑顔の写真撮影だけで
終わるわけにもいかず、何としても華々しく謳いあげる「成果」を導き出す必要がある。

 そこでまず考えられるのが、この米中接触モデルであり、それを踏襲した共同コミュニケの作成と発表ということになる。

 もし、共同コミュニケ発表となった場合、上海コミュニケの時と同様、世界が注目する核問題や関係改善などについては、具体的内容については合意できないまでも、以下のような「努力目標」を掲げることが予想される。

  1. 朝鮮半島の非核化は南北両国のみならず、米国および関係諸国の望むところであり、その実現に向けて双方が努力する。
  2. 米朝両国は関係正常化に向けて今後着実かつ段階的な交渉を進める。
  3. 非核化のためのプロセスの進行具合に応じて、両国の経済関係を含む関係改善、文化および人的交流を促進させる。
  4. 北朝鮮による核・ICBM実験中止および核実験場閉鎖措置と引き換えに、米国は対北朝鮮経済制裁の軽減に応じる。
  5. 北朝鮮は当面、核開発を現状のまま凍結する。

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