世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月7日

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 中台関係は、2016年の蔡英文総統選出以来冷え込んでいる。中国は台湾に外交的圧力をかけ、中国軍近代化を続け、台湾のいかなる独立の動きも阻止し、必要とあれば武力による台湾併合も辞さない構えである。両岸関係は2008年よりは安定しているが、関係は依然として緊張しており、近いうちに改善される見込みは極めて薄い。 米国は、中台間の仲介もしないし、台湾に交渉に臨むよう圧力もかけない。しかし、台湾関係法に基づく我々の台湾の安全保障への関与は、台湾が強い立場から中国に関与するのに必要な自信を与えている。

出典: US Senate ‘Advance Policy Questions for Admiral Philip Davidson, USN Expected Nominee for Commander, U.S. Pacific Command’ (April 17, 2018)
https://www.armed-services.senate.gov/imo/media/doc/Davidson_APQs_04-17-18.pdf

 デイヴィッドソンの軍歴は、第6艦隊(地中海および大西洋東部を担当)司令官、アメリカ艦隊総軍(大西洋軍を母体とする)司令官を歴任するなど、太平洋とは縁が薄いのではないかとの懸念も一部にはあった。しかし、上記の証言の通り、明確で常識的な対中認識を持っており、太平洋軍司令官としての資質は十分備えていると見られる。前任のハリー・ハリスは対中強硬派として知られていたが、その路線がおおむね引き継がれると判断してよいであろう。なお、本人も、自らの経歴を踏まえ、公聴会でも「あらゆる機会を捉え、地域に関する知識を高める」と述べている。

 昨年12月の「国家安全保障戦略」では、中国を競争相手と明言し、今年1月の「国防戦略」では、中国を修正主義勢力と位置づけている。上記証言も、当然のことではあるが、これらと軌を一にした内容となっている。すなわち、米国は同盟国・パートナー国とともに、ルールに基づいた自由主義的な国際秩序の維持を目指すが、中国はそれに反対し米国を地域から排除し自らの勢力圏を拡大しようと目論んでおり、それには断固たる態度で臨まなければならない、という論理である。日本としても、当然、歓迎できる内容である。上記では割愛したが、デイヴィッドソンは、中国の各種通常戦力、核戦力、宇宙・サイバー戦力、電子戦力など、あらゆる戦力の急速な発展ぶりを詳細に取り上げ、米国にとっていかに脅威であるか描写している。かなり本気であるとの印象を受ける。

 4月24日には南シナ海上空で、米空軍の戦略爆撃機B52が訓練飛行を実施している。4月12日の南シナ海での中国海軍の大規模軍事パレードや4月18日の台湾海峡での実弾演習に対するメッセージの意味もあろう。デイヴィッドソン証言でも南シナ海について、「海空で少しでもプレゼンスが減るようなことがあれば、中国の拡張を許すことになる」とある。今後とも、南シナ海における航行の自由作戦など、米軍のプレゼンスを示す行動は、継続されるであろう。

 台湾については、台湾関係法が基礎になると繰り返し述べるとともに、台湾にできる部分は自主開発を促し、足りない部分は技術供与等をする、としている。最終的には米政府の判断次第であるが、台湾の潜水艦自主建造への技術供与なども期待される。なお、3月にトランプ大統領の署名を受け、米台間の高官交流を勧奨する「台湾旅行法」が成立したが、デイヴィッドソンも、台湾への将官訪問を積極的に進める旨、公聴会証言にて述べている。

  
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