とはいえ、一部の高位の政策当局者を含め、米国のベテラン観測筋の多くがかなり前から、普天間に対する国防総省のスタンスは沖縄県内の事情のために到底受け入れ難く、新たなアプローチを見つけなければならないことに気づいていたのも、また事実だ。
今月のコラムを書くために机に向かったその日、有力上院議員3人が国防総省の政策との決別を提唱した。米上院軍事委員会のカール・レビン委員長、共和党の元大統領候補のジョン・マケイン議員、東アジア・太平洋小委員会委員長のジム・ウェッブ議員の3人である。
「普天間代替案は終わり」
ベテラン議員がゲーツ長官にストレートすぎる警告
レビン、ウェッブ両議員は先のイースター(復活祭)の休会を利用してアジアを歴訪し、詳細な解決策の提案を添えて、ロバート・ゲーツ国防長官に驚くほど率直な警告を発した。
以下は3人が出したプレスリリースだ。
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ワシントンDC――米上院議員のカール・レビン(民主党、ミシガン州選出)、ジョン・マケイン(共和党、アリゾナ州選出)、ジム・ウェッブ(民主党、バージニア州選出)の3氏は国防総省に対し、東アジアの米軍再編計画を見直すと同時に、米国がこの地域における持続的かつ強力な米国のプレゼンスを強く支持することを日本、韓国、その他諸国に保証するよう求めた。
上院議員らは、現在の国防総省の再編計画は、非現実的で、実行不可能であり、費用を賄えないと考えている。
「日米両国が2006年に米軍再編のロードマップ(行程表)の合意文書に署名して以来、状況が大きく変わった」とレビン議員は言う。「計画されている期限は全く非現実的だ。一部のプロジェクトに関連するかなり大幅なコスト増大は、次第に制約が増す現在の財政状況の下では絶対に賄えない。沖縄とグアムの政治情勢だけでなく、2011年3月11日の悲惨な地震と津波が引き起こした惨事により日本に課せられる膨大な財政負担も考慮に入れなければならない」
「世界の勢力分布においてアジア太平洋地域が果たす役割が高まっているため、我々はこの地域の米軍の役割に関する計画を常に再評価し、更新していく必要がある」とマケイン議員は語った。「加えて、地域の安全保障と我々の国家安全保障上の利益を守るために、強力な2国間同盟を維持することが非常に重要だ」
「我が国は、東アジアにおける米軍の役割を再定義するうえで重大な局面を迎えた」とウェッブ議員は述べた。「歴史上のこの重大な時期にあって、我々は戦略の原理原則を明確に示し、そこで東アジア地域、特に韓国、日本、グアムにおける軍事態勢の構造を作り直す必要がある。こうした国々との関係の成功は、我々の前方展開兵力が地域にもたらす安定と、日本および韓国との緊密な同盟関係の継続によって保証される」
レビン議員、マケイン議員、ウェッブ議員は以下を提案する。
・今後再評価が行われるまで、韓国の米軍配備の再編を保留し、兵士に同行する家族の数を増やそうとする提案をすべて再審査する。
・グアムの海兵隊部隊の再編計画を見直し、恒久的に配置された司令部の要素が他所を本拠地とする戦闘部隊の輪番配備によって支えられる形で、島の沖合いの訓練場にも配慮した構成にする。
・キャンプシュワブに高価な代替施設を建設するのではなく、沖縄の海兵隊普天間基地にある海兵隊の部隊・施設を沖縄の嘉手納空軍基地に移転させる案の実行可能性を検証する。その一方で、現在嘉手納にある空軍資産の一部をグアムのアンダーセン空軍基地か日本国内の別の場所、あるいは両方に分散させる。
これらの提案は、納税者のカネを数十億ドル節約し、米軍を地域にとどめ、普天間基地を巡って微妙な政治問題が生じる時期を大幅に短縮し、沖縄県内の米軍の足跡を減らすことになる。一連の推薦は、ウェッブ議員が委員会に提出した提案に基づき、議会が過去2年間、国防授権法で表明してきた懸念を考慮してまとめ上げたものだ。
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さて、これは大きなニュースであり、最近バラク・オバマ大統領の国家安全保障補佐官を退任したばかりのジム・ジョーンズ大将が、ワシントンを訪れた下地、塩崎両議員に向かって「最善の解決策」は嘉手納統合案だと述べ、ゲーツ長官が6月に退任した途端にその案を押すよう迫った理由を説明するのにかなり役立つはずだ。
要約すると、レビン、マケイン、ウェッブの3議員による上記の発表は基本的に、普天間代替施設案がもう終わりだということを日本に伝えている。国防総省がこの3人の有力者を失ったのだとすれば、普天間に対する国防総省の現行のスタンスは、沖縄と同じようにワシントンでも政治的に受け入れ難いからだ。
我々は、これは国防総省にとっては「ニュース」ではないと考えている。
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