世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年8月6日

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 最近の米中関係は、北朝鮮問題、追加関税をめぐる貿易摩擦などの諸要因に加え、南シナ海・台湾海峡での対立要因が加わり、緊張の度合いを深めつつある。こうした中、7月7日、米海軍のミサイル駆逐艦2隻「マスティン」と「ベンフォルド」が台湾海峡を通過した。台湾国防部(国防省)は、当該事実を即日公表したが、異例の対応であった。今回の米国の行動を台湾が極めて重視していることの表れであると言えよう。

(wabeno/Sybirko/bodrumsurf/iStock)

 台北タイムズ紙は、本件に関して7月12日付で‘US signals its new approach to China’と題する社説を掲載、米艦艇の台湾海峡通過は、米国の地域におけるプレゼンス、軍事プレゼンス拡大という、より大きな文脈の一環である、と指摘し、米の対中態度がより強硬なものなることを歓迎している。同社説は「台湾はインド太平洋において比較的小さなプレヤーであるが、重要な地政学的価値を有している」、「中国の南シナ海における行動は、中国が世界の他の場所で足場を固めるときに如何なる行動をとるかの『リトマス試験紙』となる」などと指摘しているが、いずれも的確である。台湾は、戦略上、南シナ海、台湾海峡、東シナ海を扼する要衝の位置にある。また、同社説は「今や中国の台頭に対しては、アジアの文脈にとどまらず、インド太平洋、太平洋西部・中部を含む、より広範な戦略的文脈でのアプローチがとられている」、「中国との貿易戦争の激化に伴い、トランプ大統領は明らかに、より競争的で攻撃的な通商政策をとり、一方、マティス国防長官は、中国が地域の覇権国家、世界の超大国になろうとする野望を阻止する政策をとっている」といった観察を示している。

 習近平は最近も、南シナ海を中国固有の領土の一部である、と述べるなど、南シナ海を中国の「内海」の一部と見る「中華思想」的発想に立ち、軍事拠点化を進めつつある。南シナ海やここに隣接する台湾海峡、東シナ海に対する中国の攻勢を防止することは、日本の安全にとっても無視できない重要事である。マティス米国防長官が最近、南シナ海での中国の軍事拠点化を「覇権主義」と呼んだことは、歴史的、国際法的に見て正しい。

 インド太平洋におけるパワー・バランスを考慮する時、米国が、6月末から8月初めにかけて開催された今回の環太平洋軍事演習(RIMPAC)に中国を招待しなかったことは、当然の決断であったと思われる。また、米国が2007年以来、11年ぶりに台湾海峡に2隻のミサイル駆逐艦を派遣したことは、トランプ政権の対中警戒感をよく示すものである。

 これに対し、中国は、7月18日から23日にかけて、浙江省沖の東シナ海において実弾射撃を伴う軍事訓練を行うと伝えられていた。中国当局は、この演習は台風第10号の影響により7月20日に終了した、としているが、7月20、21日には、中国海軍の艦艇40隻以上が台湾海峡を南下したことが確認されている。

 米国は最近、台北にあるAIT(在台湾アメリカ協会:事実上の米国大使館に相当する)事務所の移転式典を行ったが、これを機に新事務所の警護のために米海兵隊員たちを台北に駐在させる旨の発表を行った。そうなれば、米国と中華民国(台湾)が断交した1979年以来、はじめて武装した米海兵隊警護官たちが台湾に駐留することとなる。
 

  
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