世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年8月22日

»著者プロフィール

 7月26日、米下院は2019予算年度の国防予算の大枠を決定する国防権限法(NDAA)を、賛成359票、反対54票で可決した。同法案は既に上院で可決されているので、これで法案が成立したことになる。NDAAの要旨は、18頁のレポートになっており、下院軍事委員会のサイトで読むことができる。以下では、そのうち中国に関する部分を紹介する。

(bazzier/TopVectors/iStock)

・米国国防戦略は、中国を戦略的競争相手と位置付けている。中国は独裁的方向に世界を形作ろうとし、不安定化させる行動で、米国や同盟諸国の安全保障を脅かしている。これに対抗して、同盟諸国や友好国を安心させるため、NDAAは次のことをする。

・ファーウェイ又はZTEが製造する危険な技術を米国政府の省庁が使用することを禁止する。

・政府全体の対中戦略を指示する。

・国防長官に、「インド太平洋安定化構想5年計画」の提出を求める。

・海洋安全保障構想(MSI)の権限を更に5年間、延長する。

・インドを主要な防衛パートナーとして位置づける。

・海軍軍事演習RIMPACへの中国の参加を禁止する。

・南シナ海における中国の軍事的、威圧的行動に関する公的報告を求める。

・台湾の防衛能力の向上を支援する。

・中国の軍事及び安全保障開発に関する年次報告書を改訂する。

・孔子学院を受け入れている大学への国防総省の基金を制限する。

 このNDAAは、共和党、民主党を限らず、超党派の圧倒的多数で上下両院で可決された。このことから、米国内で対中脅威認識が高まっていることがうかがえる。

 このNDAAに関しては、ロイターやウォールストリート・ジャーナル紙等の米国メディアが日本語でも報道したにも関わらず、日本のメディアでは、ほとんど大きく取り上げられることはなかった。しかし、ほんの一部を取り上げただけでも、同盟国である日本、そしてアジア太平洋に位置する日本にとって重要なことが盛り込まれていることがわかる。MSIにしてもRIMPACにしても、日本は参加しているし、中国企業との係わり、台湾との関係等も、日本としてきちんと考えて行かなければならないことだろう。

 上記の中国に対する記述は、NDAAの中では「新しい脅威に直面する」という項目の中で述べられた。中国の前には、ロシアが、そして中国の後には、北朝鮮が名指しで取り上げられた。北朝鮮の後は、「テロ対策」となり、その後、イランが挙げられた。

 このように、2019予算年度、総額7170憶ドルの国防費が決定し、その使途目的が明らかになった。

 NDAAの最後には、「同盟国及び友好国を支援する」という項目がある。その主な内容は、安全保障協力及びCFIUS(対米国外国投資委員会)改革の2つである。CFIUSは、米国への投資をしようとする外国企業等を審査する委員会であるが、今回、NDAAは、この委員会の権限を強化し、安全保障を考慮して、外国企業の米国への投資規制を厳しくしようとするものである。

 日本も今後、米国を見習いつつ自国の安全保障戦略を経済的側面からも、より真剣に考えなければならない時期が来るかもしれない。
 

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る