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2018年8月15日

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吉村慎司 (よしむら・しんじ)

フリージャーナリスト・北海道国際交流・協力総合センター研究員

1971年鳥取市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了。97~2010年日本経済新聞社勤務。11年ロシア・ウラジオストク国立経済サービス大学短期留学。現在は札幌市を拠点に、フリージャーナリストとして幅広い分野を取材している。公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)研究員も務める。

財政破たんで「限界自治」に陥り、非効率な行政サービスを抜本的に見直す夕張市。そのカギを握るのが、住居と町のコンパクト化だ。

吉村慎司(以下――):夕張は広域に集落が点在していますね。

鈴木直道 (Naomichi Suzuki)夕張市長
1981年、埼玉県生まれ。99年、東京都に入庁し、08年に夕張市へ派遣。2010年、内閣府地域主権戦略室へ出向し、夕張市長選出馬の決意を固め、同年に都庁を退職。11年4月から現職。

鈴木市長(以下鈴木):夕張の特徴は、急激な人口増のあとに急激な人口減を経験したことです。炭鉱開発が進んで人口が増えるときの勢いはすごかった。ある地域などは地区人口が5万人を超えて、一つの市として独立しようという運動があったぐらいです。自分たちの街に病院を、学校を、公共施設をということで各地につくっていった。そこに炭鉱閉山の波がきて、今度は人口が急減していった。1960年ごろ11万6000人だった人口が、私が市長になった2011年には1万人ちょっと。半世紀で11分の1に縮小したわけです。閉山後、限られた市財政を観光投資に振り向けて街を再興しようとしたものですから、人口が減っていくのに街をダウンサイジングするために使うお金がない。そうやって非効率の象徴のような現状が残りました。

――炭鉱住宅を市が引き継いだため公営住宅だらけです。コンパクトシティを進めるにあたり影響がありますか。

鈴木:市長就任時で公営住宅が約4000戸ありました。市の全世帯数は約5000ですから多さがわかってもらえると思います。でも私は、公営住宅が多いことはコンパクトシティ推進には圧倒的なプラス要素だと考えています。もし民間不動産が多い地域で行政がコンパクト化をやろうとしたら、多くの物件所有者との膨大な交渉が避けられないでしょう。過剰すぎる公営住宅を適正規模化することが、すなわち都市構造を変えることになります。これに、今まで少なすぎた民間賃貸の建設をコンパクトシティと連動させて促すことで、人の誘導が可能になります。

――真谷地地区の住宅を半分に集約した際には苦労したそうですね。

鈴木:確かに当初、すべてのことで住民と衝突しました。2012年にまちづくりマスタープランをつくったとき、住宅を集約していくという総論については賛成してるんです。でも、あなたが引っ越してくださいという各論に入ると、事情があって無理です、となる。市の担当課から、揉めてるので市長はしばらく真谷地に行かないでくれと言われました。市長が出て行くのは最後の手段ですからと。でも最後だろうが結局話すことになるんだから、行ったんです。意外なことに、市長を出せって怒ってた方々が、あ、来たんだねと(笑)。こういうことですよと説明したら、耳を傾けてくれました。

――住民からの要望はありましたか。

鈴木:私たちは当初、集約先の各戸にユニットバスをつくると提案したんです。みなさん風呂のない棟から、共同浴場に通ってましたから。でも、みなさんの答えは「いらない」だった。なぜかと言えば、みんなで共同浴場に入ることで互いの様子を知ることができ、風呂のあとでお茶を飲んだりもしてる。ユニットバスができるとライフスタイルが変わるからいらない。その代わり今の共同浴場をバリアフリーにしてくれと。こちらから案を押しつけるんじゃなくて、地域のニーズ、習慣を考慮すべきなんだと感じました。

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