WEDGE REPORT

2017年11月25日

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藤波匠 (ふじなみ・たくみ)

日本総合研究所調査部上席主任研究員

1992年、東京農工大学大学院修了。東芝、さくら総合研究所などを経て、2015年より現職。主に地方再生研究に従事。著書に『人口減が地方を強くする(日経プレミアシリーズ)』、新著『「北の国から」で読む日本社会(日経プレミアシリーズ)』など。

 人口減少と高齢化が進むなか、自治体の中心部への居住と各種機能を集約し、人口集積が高密度なまちを形成する「コンパクトシティ」を目指す取り組みが、特に地方都市で行われてきた。基本コンセプトは、市街地の拡大を抑制し、都市機能(行政機関や商業施設など)を集約するとともに、人口密度のなるべく高い状態を維持することである。これにより、たとえ人口減少が進んでも、都市のにぎわいや都市機能へのアクセス性を低下させないようにすることを狙っている。しかし、この理念自体は正しいが、郊外に住む人を中心市街地に移住させることは容易ではない。

 除雪費用などの財政負担軽減の観点から、早い段階で積極的にコンパクトシティを推進してきたのが、青森市である。同市は、2001年にコンパクトシティのシンボル的施設として、青森駅前に官民複合施設フェスティバルシティ・アウガ(略称:アウガ)を設置したが、開業以来テナントの売り上げ低迷により赤字経営が続き、厳しい経営状況に見舞われた。

 運営主体である第三セクターの青森駅前再開発ビルは、これまで市の支援や金融機関の債権放棄などにより延命を図ってきたものの、事業環境は好転せず、本年7月5日、青森地裁へ特別清算を申請した。まさに箱物主導のコンパクトシティ政策の限界が明らかになった例といえよう。

 また同市では郊外に暮らす高齢者に街なかへの移住を促したが、一部で中心市街地に近いマンションが売れた程度で、劇的な効果は見られなかった。古くから郊外に暮らす高齢者にとって、愛着ある郷土を捨てて、市街地に居を移すことは簡単な決断ではない。まして、地価の安いエリアから高いエリアへの移転は、費用負担の問題もある。不動産を担保に生活費を確保するリバースモーゲージも、地価の安さがネックとなる。

居住エリアが広がる甲府市。多くの地方都市でスプロール化が進む
(JIJI PRESS PHOTO)

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