オトナの教養 週末の一冊

2017年8月18日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 昨今、日本でも政府が本腰をいれている地方創生。ヨーロッパでは、辺境とも言われる土地で面白い動きが起きているという。なかなか情報の入ってこないヨーロッパ各地を視察した様子を1冊にまとめた『世界の地方創生 辺境のスタートアップたち』(学芸出版社)の編著者の一人で、建築家、一般財団法人HEAD研究会理事長の松永安光氏に地方創生の具体例とヒントを聞いた。

――これまでにも『まちづくりの新潮流』『地域づくりの新潮流』(共に彰国社)など、まちづくりに着目した本を書かれています。そうした視点から現在の観光産業でのトレンドをどう考えていますか?

松永:『まちづくりの新潮流』では、コンパクトシティやアーバンヴィレッジなどまちづくりの最先端の手法を視察した事例を交えながら紹介した他に、イタリア・ピエモンテ州のブラという街が発祥のスローフードについても紹介しました。こうした食に関するガストロノミーと言われる分野は、今回紹介した辺境では特に重要になっています。また、数十年前は団体で名所や旧跡をまわるような旅行が流行しましたが、現在はその他に語学研修やアート鑑賞、スポーツ体験など体験型のツーリズムが主流です。今回訪れた辺境と言われる地域には森林資源が豊富ですから環境共生も重要なポイントとなります。

――「食」「体験型のプログラム」「環境」の3つがトレンドであると。3つのそれぞれの事例について具体的に教えて下さい。まず「食」について。ヨーロッパは、食事が美味しい土地とそうでない土地の差が激しいイメージがあるのですが。

松永:イギリスは、かつて食のマズさで言えば天下一品なんていう皮肉を言われていましたが、それは過去の話です。イギリスに移り住んだ多くの移民たちが、母国料理のレストランを始め、美味しい料理を提供するようになると、マズいレストランは一掃されたと聞きます。

 また、同じく食に関してはあまり良い噂を聞かなかったアイルランドで、現在注目されているのがマナーハウスでの料理教室です。ご存知のように、イギリスやアイルランドには、貴族などが建てた豪華なマナーハウスが現在も残っています。しかし、こうした建物を維持するには莫大な費用がかかる。なかには、売却されてしまう場合もある。しかし、ホウスという街にあるホウスキャッスルでは、初心者から参加できる一般向けの料理教室が開かれていて、人気があります。歴史の重みを感じることのできる厨房で行われているのです。

ホウス城のキッチン(漆原弘)

 アイルランドには、この他にも宿泊したり、料理を楽しんだりできるマナーハウスがいくつかあり、国内のみならず海外からの観光客にも好評だと言います。

――「食」なら日本各地にもさまざまな食文化がありますから、取り入れられそうですね。

松永:今回、バスク地方のサン・セバスチャンなど美食で有名な街が数多くあるスペインを訪れました。その中で、一番驚いたのはナヴァーラ地方にあるレストラン付きホテル「マヘール」のオーナーシェフであるエンリケ・マルティネス氏の取り組みです。彼は現在スペインのガストロノミー界で大変注目されています。

 このマヘールというレストランは、これまで村の結婚披露宴などで使う田舎のささやかなレストランだったそうです。しかし、彼がオーナーシェフになり、この辺境の地と言うべき場所から、チェーン系列のホテルや病院などへ本格的なグルメ料理を提供するケータリングサービス企業「デ・ポンティーゴ・マヘール・クックス」を15年に設立したことで大きく変わります。

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