オトナの教養 週末の一冊

2017年8月18日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 彼は、質が高く、なおかつ安価なケータリングサービスを提供するために、祖父や父から引き継いだレシピはもちろんのこと、食材の新たな保存法やレシピを開発してきました。たとえば、ナヴァーラ地方の特産品は玉ねぎですが、この地で収穫される玉ねぎは旬が2週間程度しかないため、売上もたかが知れています。そこで、彼は収穫した玉ねぎを炒め、冷凍保存する方法を考え出しました。2年間冷凍保存することで、旬が過ぎるどころか、なんとも言えないうま味が出るということです。

 また、アンダルシア地方ではトマトがたくさん収穫できますが、味があまり良くない。彼は、それらのトマトを大量に仕入れ、同じく2年間冷凍保存するそうです。日本でも最近熟成肉が流行っていますが、彼がやっているのは熟成野菜とも言うべき方法です。野菜の他にも、ポルトガルで漁獲されたタコを2年間冷凍して食べると美味しくなるそうです。

 こうした事例を考えると、日本はまだまだ食べ方の研究が必要だと思いますし、特産物といっても展開が小規模なので、なかなか世界規模まで広がらないところが課題だと思いますね。

――「環境」に関して参考になる場所はありますか?

松永:オーストリアのアルプス地方にあるフォアアールベルク州は、日本の山間地域にとってもヒントになる土地ですね。

 この州は、ユネスコ・エコパーク指定後、観光客が急増したそうですが、建築家である私としては、環境共生を目指した木造建築の建物に刺激を受けました。同州のザンクト・ゲロルトの村役場は木造建築で、地中熱をヒートポンプで利用するなどさまざまな工夫がなされ環境共生を目指していますし、同州の小都市であるドルンビルンには、最近8階建ての木造のオフィスビルが建てられました。 

ザンクト・ゲロルトの村役場(松永安光)

 これらの設計者は同一企業で、最近ではカナダのバンクーバーに木造18階建てのビルを建設しました。ヨーロッパを見渡しても、木造建築が次々と建設されています。環境的な配慮があると評点が良くなるということもあるようです。

――日本にも森林はたくさんありますから、同じように環境に配慮した建物をつくることができないのでしょうか?

松永:いま紹介したオーストリアでは、8階建て以上の木造オフィス研究に連邦政府が助成し研究を進めています。

 日本で木造をつくる場合、3階以上の場合は法律で特別な許可を得ないと難しいことになっている。これは防火の考え方が影響しています。

 また、日本の地形の特性として、森が山奥にあることが多い。森で木材を採取して運ぼうと考えると、まず運ぶための林道をつくらなければなりません。また、山間の土地の所有権が入り組んでいることも課題です。そして、内外の木材代の差額を国が補助しているので、林業家にとってインセンティブが働かないなどさまざまな問題を抱えています。

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