WEDGE REPORT

2018年7月24日

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米山秀隆 (よねやま・ひでたか)

富士通総研経済研究所 主席研究員

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。89年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所を経て現職。専門は、住宅・土地政策、日本経済で、特に空き家問題に詳しい。主な著書に『限界マンション』『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社)などがある。

全国で空き地・空き家が急増し、登記簿などの情報を見ても直ちに所有者に辿り着くことが難しい所有者不明の物件が増えています。所有者不明の土地にいたっては、いずれは北海道の面積に相当するだろうと言われるほど。これまで価値があるとされてきた不動産ですが、マイナス価値の「負動産」と化しているのが現状です。こうした問題の有効な対策について、空き家問題に詳しく、『限界マンション』『空き家急増の真実』などの著書がある米山秀隆さんに、新刊著書『捨てられる土地と家』(ウェッジ)をもとに3回に分けて解説いただきます。
*1回目はこちら
(phototechno/iStock/Getty Images Plus)

一番取り組まれている施策「空き家バンク」

 空き家の利活用促進策については、人口減少で悩む地方の自治体などが、早くから空き家バンクの設置を中心に進めてきた。空き家バンクとは、自治体が空き家の登録を募り、ウェブ上で物件情報を公開するなどして、購入者や賃借人を探すというものである。

 これまで自治体が講じた空き家対策のうち、一番取り組んでいる割合の高い施策は、空き家バンクである。自治体は近年、適正管理の推進や解体促進策としての空き家管理条例の制定を急いだが、それ以前から地方の自治体では、利活用促策として空き家バンクを設置してきた経緯がある。空き家バンクを設けている自治体は2017年時点で、検討中も含めれば全国で1,000以上に達する。

 しかし、空き家バンクへの物件登録、成約実績には自治体によって差が大きい。市町村が開設した空き家バンクでは、開設以来の累計成約件数が10件未満にとどまるものが半数となっていた(移住・交流推進機構調べ、2014年)。さらに、その後の調査で各年度(2015~17年度)の成約件数を見ると、成約件数が0件という空き家バンクが毎年2~3割に達している。空き家バンクを設置したものの、開店休業状態のものが多いことを示している。

 そうした中で、実績が出ている空き家バンクは、所有者による自発的な登録を待つだけではなく、不動産業者やNPO、地域の協力員などと連携して、積極的に物件情報を収集している。さらに、空き家バンクを見て問い合わせがあった場合、物件案内はもちろんのこと、生活面や仕事面など様々な相談にも応じたり、先に移住した人と引き合わせたりするなどきめ細かな対応をしている。自治体職員だけでは対応しきれないため、NPOや住民とも連携をしている。空き家バンクの成約件数が最も多い自治体は長野県佐久市で、2008年度のスタートからこれまでの成約件数は400件以上にのぼる。

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