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2018年7月24日

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米山秀隆 (よねやま・ひでたか)

富士通総研経済研究所 主席研究員

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。89年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所を経て現職。専門は、住宅・土地政策、日本経済で、特に空き家問題に詳しい。主な著書に『限界マンション』『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社)などがある。

地方を中心に成長「買い取り再販ビジネス」

 一方、空き家を流動化させるビジネスも登場している。近年活発化したのは、地方を中心に空き家を数百万程度で安く買い取り、数百万円程度で改修し、1,000万円から1,500万円で売る、買い取り再販ビジネスである。地方では新築の半値以下であり、立地や物件の状態によっては十分需要が生じる。親から引き継いだ土地付きの家を数百万円で売却するのには抵抗があるが、保有し続けても税負担、管理責任、さらには事故が起こった場合の工作物責任などを負うばかりでメリットがなく、値段がついただけましと売却する人が増えている。

 その代表的な事業者は、こうしたビジネスの先駆けで今や全国に拠点を置く「株式会社カチタス」(群馬県桐生市)である。競売物件の買い取りから事業を始め、近年は空き家の買い取りで成長し、地方都市を中心に100店舗以上を持つ。年間の取り扱いは約4,000戸で、累計4万戸以上の販売実績を持ち、2番手以下に圧倒的な差をつけている。空き家を買い取る目利きが、この立地でこの状態ならば売れると見込んだ物件を仕入れ、売れる値段で確実に売り切る戦略を取っている。

 こうしたビジネスは、都市部においては地価の高さから販売価格が高くなり、新築との競争力を出しにくいため、地方を中心に成長している。

賃貸需要の開拓を専門に

 さらに近年登場したのは、空き家を市場では供給が少ない戸建ての賃貸物件として活用しようとする動きである。所有者から安く借り、最低限の改修を施し、相場より安い価格で貸し出すことによって、起業家向けやアトリエ、工房などの需要を開拓している例がある。そのような需要が見込まれる場所であれば、十分、ビジネスとして成り立つ。こうした不動産投資は、「廃墟不動産投資」や「古民家不動産投資」と呼ばれることもある。また、こうした賃貸需要の開拓を専門で行っている仲介業者もいる。

 芸術家や工芸家のアトリエ、工房に使える物件を仲介する「取手アート不動産」(NPO法人取手アートプロジェクト、茨城県取手市)と株式会社オープン・エー([東京都中央区]が運営するサイト)、空き家を若いクリエーターなどの入居者とともに、工房やアトリエなどに改修して使う活動に取り組んでいる「omusubi不動産」(千葉県松戸市)などがある。

 こうした取り組みでは、借り手が自由にDIYで改修を行い、原状回復の義務がないDIY型賃貸としていることが多い。取手アート不動産では、東京芸術大学の学生や卒業生の需要などを開拓している。

 omusubi不動産がターゲットとする物件は、荷物だらけの古民家、未内装のままぼろぼろになっていしまった古ビル、ほとんど空室のアパート、昭和の団地やマンションなどであり、こうした価値がないと思われている物件を、DIYや新たなアイディアによって再生させている。

 以上述べてきた買い取り再販、賃貸需要の開拓は、需要がつかない「負動産」と思われていた空き家の新たな需要を開拓した例として注目される。ただ、当然のことながら、そのような潜在需要のある場所でなければ成り立たない。所有者にとっては、売却価格や賃貸料は高くなくても、放っておいてただ固定資産税を払っているよりはましという観点から、流動化を考える場合が増えている。

 

米山さんの新著『捨てられる土地と家』(ウェッジ)


 













 

  
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