解体 ロシア外交

2018年9月5日

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訪れた北方領土は、ロシアの実効支配が着実に進んでいた(撮影:筆者、以下同)

 2018年8月末、台風20号が迫り来る中、ビザなし交流の枠組みで北方領土の国後島と色丹島に訪問する機会をいただくことができた。

 今回の訪問で一番驚き、またショックだったのがロシアによる北方領土の発展が目覚ましく進んでいたことである。筆者が北方領土に行ったのは初めてであり、インフラ整備がかなり進んでいると言われてきた択捉島には今回行っていないが*1、対してこれまであまりインフラ整備が進んでいないと言われていた国後島、色丹島でのインフラ整備の現実に愕然とした。

 こういった状況の中で、現地の人々は日本とロシアが進めている共同経済活動や、領土返還についてどのように考えているのか。前編ではまず現地の実態をレポートしていきたい。

着実に進むロシアの実効支配

 当然ながら、現地ではロシア人が生活し(ただし、中央アジアや北朝鮮などからの出稼ぎ労働者の数は年々増加しているだけでなく、ソ連時代から現在に至るまで旧ソ連諸国出身者も多く、実は純粋な「ロシア人」は決して多くもないとも言える)、ロシアの通貨・ルーブルが流通し、携帯電話・インターネットの電波などもロシアのものが使われていて、ロシア本土のテレビなどが見られているほか、北方領土の新聞社(かつてはテレビ局もあったそうだが、1996年に閉鎖され、現在はない)などもある。ロシアの実効支配は着実に進んでいた。

 両島の発展を支えているのが、「2016 年から 2025 年までのクリル諸島*2(サハリン州)における社会及び経済的発展計画」(以後、「クリル発展計画」と略記)である。クリル発展計画は、現在第3期目であり、2007 年から 2015 年までの第2期および第3期のものが、極めて良い形で進んでいるという。なお、ボリス・エリツィン大統領時代に始められた第1期の計画は、エリツィンの側近に「どうせ日本に返すのだから」と全くやる気がなかったこと、また、島にくるまでにお金が途中で抜かれてしまったことが原因で、全く機能しなかったと後述の現地新聞社『ナ・ルベジェ』編集長のセルゲイ・キセリョフ氏が述べていた。

 国後島、色丹島を管轄する「南クリル地区行政府」では、ユーリ・ブダコフ地区長代理も両島の発展を、自信を持ってアピールしていた。両島の人口は、2018年1月現在で1万1600人だが、半年で39人の新生児が生まれ、毎年300~400人位の人口が増加しているという。
 

*1:択捉島は当地の建設・水産企業であるギドロストロイ社(アレクサンドル・ヴェルホフスキー社長)によるインフラ整備もあって、インフラがかなり整っていると言われている。なお、ギドロストロイ社は、サハリンに本社をおきつつも、択捉を最大の拠点としており、サハリン1 つ、択捉に2つ、色丹島に1つの水産加工場を保有し、水産業のみならず、住宅建設、インフラ整備、ホテルや温泉、文化施設や体育施設など様々なものを建設・整備しているという。社長のヴェルホフスキーは元軍人で、北方領土に配属となった際にその水産資源に目をつけて水産加工業を興して大成功を収めた人物で、連邦会議の議員もしており、プーチン大統領とも近いとされ、北方領土の帝王と見なされている。

*2:ロシアでは千島はクリルと呼ばれていて、サハリン州の管轄である。北方領土の択捉島はクリル管区、色丹島・国後島・歯舞諸島は南クリル管区、北千島は北クリル管区に属する。

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