2024年4月26日(金)

解体 ロシア外交

2018年9月5日

北朝鮮からの出稼ぎ労働者たちの存在

 他方、流出については、子供の教育の問題による流出が一番大きく、また任期が終わって故郷などに戻るパターン、島の生活に不便を感じての移住などがあるという。北方領土には、小中高一貫教育の学校があるが、島には大学がないため、大学への進学希望者はモスクワやサンクトペテルブルグ、ハバロフスクなどの本土の大学に進学するという。その際、家族も子供について島を出ることも多いそうだ。なお、ブダコフ氏は子供やその家族は、大学を卒業したら島に戻ってくると話していたが、筆者が一般住民に聞いたところ、戻ってこないケースが多いと言っていたし、実際にこれから大学進学をしたいと考えているティーンエイジャーに話を聞いたところ、彼(女)らはサンクトペテルブルグ、モスクワ、ハバロフスク、ウラジオストクなどの大学に進学したいと考えており、彼らのうちの多くは「北方領土には未来がないから大学を卒業してもそのまま本土に残りたい」と話していた。

色丹島の学校(小中高)

 そして、島の建設業は主に出稼ぎ労働者に支えられているようだ。先述の色丹島の水産加工工場では、通常の水産加工業は主にシベリアから来たロシア人が担っているとのことだが、工場建設は海外からの労働者に委ねられているという。工場長は、工場の建設労働者は、アイスランド(建設労働というよりも、設備の整備のためと思われる)、韓国、ポーランド、アルメニアやウクライナ、ムルマンスク、カリーニングラードなどから来ているとしながらも、北朝鮮や中央アジアからの労働者の存在は明確に否定した。

 しかし、村長や現地の少女たちに聞いたところ、韓国からの労働者はおらず、北朝鮮からの労働者は「すごく大勢いる」とのことであったし、実際に工場建設をしていた労働者に話しかけたところ、ウズベキスタンやキルギス出身だと言っており、名目的には北朝鮮や中央アジアなどからの労働者の存在を隠す必要があるように見えた。なお、そのような建設労働者は短期の出稼ぎ労働者で、3〜4カ月単位での滞在が多く、長くても1年で帰ってゆくそうだ。

後編へ続く

  
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