定年バックパッカー海外放浪記

2018年9月23日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

なぜ第二次世界大戦後も現在に至るまで豪州は海外派兵しているのか

 さらに私が「なぜオーストラリアは第二次世界大戦後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、湾岸戦争と海外の戦争に兵士を派遣しているのか」と疑問をぶつけると、イアンは考えながらゆっくりと説明を始めた。「第二次世界大戦では日本軍の圧倒的海軍力(overwhelming sea power)により極東の英国海軍は壊滅。そして人口大国の日本の陸軍は電撃的スピードでアジアを占領して、オーストラリア兵も多数捕虜になった」

タスマニア州の州都ホバート市の高台に聳える第二次世界大戦戦勝記念日

 確かに当時7500万人の軍国主義国家日本はオーストラリアの人々には脅威であったであろう。イアンはさらに続けた、「第二次大戦当時のオーストラリアの人口は700万人くらいだし戦争の準備も不十分だった。第二次世界大戦により英国の世界帝国としての地位は失われた。代わりに自由世界のリーダーとなったのが米国だ。オーストラリア単独では広大な国土を守れないことをオーストラリアの人々は日本軍の攻撃で痛感した。太平洋に位置するオーストラリアが米国と軍事同盟を結んだのは当然の選択だ。米国が大義を掲げて戦う時に同盟国のオーストラリアが参戦するのは当然じゃないか」

 彼の論理はまさしく軍事同盟の基本原則であろう。国連やNATOという多国間の枠組みも含めて現代世界では各国が集団的安全保障体制の下で自国の平和を担保することが一般的である。そして集団的安全保障体制を機能させるためには加盟国が国力に応じて相応の軍事力を提供することが求められる。

 イアンと同じ考えをオーストラリアの国民が幅広く共有しているからこそ、第二次大戦後70年間豪州歴代政府はオーストラリア軍の海外派兵を決定してきたのであろう。

99%のオーストラリア人は日本国憲法9条を知らない?

 イアンに「日本人はオーストラリアに対して豊かな自然に恵まれた平和な国というイメージを抱いている。オーストラリアが第二次世界大戦後も海外の戦争に派兵してきたことをおそらく99%の日本人が知らないと思う」と率直に感想を伝えた。

 イアンは逆に聞いてきた。「日本は米国やオーストラリアと軍事協力関係にあり一緒に軍事合同演習もしている。例えば太平洋のどこかで平和を脅かすような事態が発生すれば日本も当然自衛隊を派遣するだろう? だからオーストラリアが海外に派兵するのは国家として当然の行為だと思う」

 私は日本国憲法第9条を説明して、日本国民の過半数は自衛隊の海外派遣に依然として否定的見解であることを解説した。イアンは怪訝な顔をして「オーストラリア人の99%は日本国憲法9条を知らないと思う。さらに大国日本が国際秩序や国際平和を守るために軍事的貢献を何もしないというのはオーストラリア人には理解できないと思う」と首を傾げた。

 一国平和主義という教条主義的日本国憲法9条的発想は国際社会の常識では“おとぎ話”に過ぎないのであろう。憲法9条改憲論も国際社会の現実と常識を日本人が理解しないと果てしない“神学論争”に陥るのではないかと危惧した。

⇒第3回に続く

  
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