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2018年10月31日

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松尾康憲 (まつお・やすのり)

ジャーナリスト

1953年生まれ。76年共同通信社入社。87年から2004年まで北京特派員、上海支局長、ハノイ支局長を歴任。現在は放送報道局委員。著書に『現代ベトナム入門 ドイモイが国を変えた』(日中出版)、共訳書に『中国の禁書』(新潮選書)、『性愛の中国史』(徳間書店) 

 最高裁を8月7日に訪ね、事務総局家庭局の宇田川公補(うだがわ・こうすけ)第二課長にインタビューしたところ、成年後見制度の改革基調を印象付ける発言だった。これが実践されるならば、百沢力や筆者が成年後見人として体験した不条理の数々が半減するのではなかろうか。だが司法や法曹の一線現場が、そう簡単に変身するだろうか。画餅にならないよう、今後の推移を国民目線で検証し続ける必要がある。(敬称略)

(nito100/hayatikayhan/grinvalds/windujedi/iStock)

――認知症700万人時代が近づいている。これまで約21万人の利用がある成年後見制度の課題は。

宇田川:成年後見制度利用促進法が2016年5月に成立、17年3月に利用促進基本計画が閣議決定され、それに基づいて制度の運用改善の議論や、自治体の地域連携ネットワークづくりが進められているところだ。裁判所としても基本計画の取り組みに沿い、自治体や専門職団体とも連携して、適切な役割分担をしていく。

――弁護士、司法書士、社会福祉士の3つの「専門職」が成年後見人などの約63%を占め、親族後見人を大きく上回っている。

宇田川:そうした状況になっていることは承知している。この点については、裁判官の判断事項に関わるところではあるが、裁判所として、基本計画を踏まえ、まず身近な人、親族などに後見人になっていただくか、もしくはその地域の人に市民後見人として関与していただくということが望ましいと考えている。

 ただ、後見人一人で全てを担えるのかという問題があるので、自治体が「地域連携ネットワーク」を束ねる中核機関を設置して後見人を支援していくことが重要と考えている。これは、本人・後見人が真ん中にいて、その周辺に親族、介護サービス、医療機関、ケアマネジャーがチームとなって本人らを支えていこうという話だ。専門的な関与が必要な課題がある場合には、この中核機関を通じて専門職に関与してもらうこともある。

 そういうことが将来的にはイメージされているが、中核機関が機能するまでの過渡期においては裁判所としても親族後見人などをサポートするための専門職の後見監督人を選任していくことも必要だと考えている。または、親族後見人と専門職後見人を選任して、財産管理と身上監護という形で権限を分掌せずに専門職後見人が親族後見人をサポートしていくことも考えられよう。

――家庭裁判所は、親族と専門職の成年後見人の組み合わせをするときに、〝お見合い〟させていればいいのだが、それを欠いたがための深刻な例を取材した。

宇田川:今後、中核機関がそれまでの本人の様子を見ていた関係者からの情報を集約し、一番適切な人を後見人候補者として推薦し、裁判所はそれを受けて、その人でいいかどうかという判断をする仕組みが考えられる。弁護士とのペアリングがどこまでできるかはわからないが、基本的には、まずは親族とか身近な人を選任し、中核機関がそのサポートをする形を考えている。

――専門職を付けて、課題が片付いた場合はまた親族後見人に戻すという、大方向として、そう捉えていいのか。

宇田川:裁判官の判断事項に関わるところであるが、課題が解決して、その親族が、福祉行政の支援を受けられるような場合は、専門職に関与していただく必要はないと思われるし、専門職も、今後、後見事案が増加していく中で、全部に関与していくことは難しいと思われる。さらに専門職だけでは、身上監護、意思決定を尊重することが十分ではないという部分もあり得るところであり、チームとの連携が必要であろう。

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