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2018年10月16日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

カナダ・ジャスティン・トルドー首相(AFP/AFLO)

 米トランプ大統領が今年初めに鉄鋼、アルミにそれぞれ25%、10%の関税を課すると発表した。狙いは中国製の安い鉄鋼製品ではあるのだが、対象はEU、そしてNAFTAによる自由貿易協定のあるカナダなどにも広がった。関税障壁を上げる一方で米国は自国の鉄鋼製品の輸出に拍車をかけている。

 そんな中、多くの米自動車メーカーが工場を持ち、それゆえに鉄鋼製品の輸入も多いカナダが「世界のダンピング・センターになることを避けるため」米国と同様の鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を実施する決断を行った。とりあえず10月25日から試験的に導入され、その後法案を継続するかどうかが協議されるという。

 今回カナダが関税対象とした鉄鋼製品は重量プレート、コンクリート用鉄筋、発電所などに使用されるパイプ類、ホットロールシート、塗装済み鉄鋼、ステンレス製ワイヤー、ワイヤーロッドなど。ただしカナダの関税は対象国が中国、トルコなど一部の国に限定され、米国、チリ、メキシコ、イスラエルなどは除外されている。

 カナダの言い分としては「米国に高関税のため輸出できなくなった鉄鋼などがカナダに押し寄せることを避けたい、しかし鉄鋼製品を必要とする国内産業は守りたい」ということだ。そのため関税実施後も鉄鋼製品が必要不可欠な企業に対しては関税分を政府が補助する政策も取られる予定だ。

 NAFTAは米・カナダ・メキシコの三国が人とモノの行き来を自由にする、という協定だったが、特に人に関してはメキシコからの不法移民問題もありほとんど機能していない、と言える。米カナダ間は経済的格差も小さくこれまでは非常に良い関係が保たれていた。しかし、メキシコにとっては米国の製造業の工場を多く誘致できたものの、どちらかと言えば搾取される立場だった。それでもメキシコ政府にとってNAFTAの廃止は大きな打撃となる。

 当初はNAFTAの完全廃止を訴えていたトランプ大統領だが、最後になってようやく新たな条約締結に合意。11月末にはNAFTAに代わりUSMCAという新たな条約が結ばれる。

 USMCAでは様々な貿易条件の変化があるが、自動車業界に注目すると「米・カナダ・メキシコで生産される車は75%のパーツ、素材などを現地調達の物とする」という項目がある。米国はこれにより中国など諸外国に流れていた車の部品産業を国内に取り戻す意図がある。

 しかし、これを実現するためには中国などに展開していた部品工場の閉鎖、輸入の中止、新たに北米での工場建設など、大きな障壁がある。また部品産業は鉄鋼製品を多く使用する業界であり、今後米国製鉄鋼が中心となれば値上がりは防げない。自動車メーカーの中でフォードはいち早くこの条項に賛成意見を述べているが、その理由は「北米という地域で集約的に車を生産することでグローバルな競争力が向上する」というものだ。確かに部品から組み立てまでを現地で行えば効率は上がるが、それが完成品としての車の価格にどれだけ反映するのかは現時点では予想できない。

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