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2018年9月22日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

(Besjunior/Gettyimages)

 チェス、将棋、碁などで人間より優れたゲームプレイヤーであることを証明したAIが、今度はアートの分野でも人間を凌ぐ勢いを見せている。グーグルでは同社内のAI開発チームであるグーグル・ブレインがマシン・ラーニングのアルゴリズムを用いてアート作品を生み出すソフトウェア、「ディープ・ドリーム・ジェネレーター」を公開している。

 ディープ・ドリーム・ジェネレーターは画像処理ソフトウェアだが、ユーザーの写真や絵などをAIが処理し、アートワークのような作品に仕上げることができる。ディープ・ドリーム・ジェネレーターには3つのツールがあり、「ディープ・スタイル」は写真とアート作品を組み合わせて新しいイメージを作り上げるもの。

 「シン・スタイル」はディープ・スタイルの簡易版で、人の顔にアート作品風の加工を施すもので、携帯電話の画像処理アプリでも似たようなことができるような内容。注目されているのは「ディープ・ドリーム」で、本来はディープ・ニューラル・ネットワークが画像を見たときにどのようなイメージで捉えるのかを突き詰めたもの。これに画像処理を加えると、サイケデリックや抽象的なアートワークへと変貌させることができる。

 ディープ・ドリーム・ジェネレーターのホームページでギャラリーを見ると、まるでゴッホの作品かと見紛うようなアートワークが並ぶ。また写真とアート作品、という組み合わせだけではなく、写真と歯車の画像、といった無機物との合成アートも可能で、このソフトウェアが生み出せるアートは無限大の可能性を秘めている。

 このようなAIを使ったアート作品作成は現在全世界で行われているが、ついに今年10月、世界的なオークションハウスであるクリスティーズがAIアートのオークションを行うことが明らかにされた。10月23日から25日の間で、AIが生み出した作品のオリジナルプリントをオークションにかける、という。

 作品はフランスのObvious社によるもの。同社は「友人、アーティスト、研究者の共同作業」を掲げて数々のAIアートを生み出している。ここではGAN (Generative Adversarial Network)と呼ばれるプログラムを使用、まずイメージを生み出し、それを加工する、というアルゴリズムが適用されている。

 同社では14世紀から20世紀の間に描かれた1万5000のポートレイト作品をGANに学ばせた。そこからAIがそれぞれのポートレイトの特徴を学び、それを「人が描いたものと区別できない」ところまで加工して作品にする。こうして生まれた作品群は具象でありながらどこかあやふやな、不思議な仕上がりとなっている。

 このAIアートがオークションで実際に売れるのか、どれほどの価格がつくのかには注目が集まっている。人がAIが作り出したイメージを「アート作品」として認識し、それに価値を見出すことでアート市場が大きく様変わりする可能性があるためだ。

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