From LA

2018年6月26日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 米国マサチューセッツ州ボストンに今年3月、「完全にロボットが調理する」と標榜するレストランが登場した。スパイス、と名付けられたこの店は、MITの学生が考えだしたもの。家賃が高く、それに従ってレストランなどの料金も上がる一方のボストンという街で「誰もが気軽に利用でき、リーズナブルな価格で安全な食べ物を提供する」のがコンセプトだという。

 

 ダウンタウンの中心部にあるレストランに、一体ロボット調理とは何を意味するのかを知るために訪れてみた。外観はトレンディな普通のレストラン、大勢がランチを楽しむ姿が通りからも見られた。ガラス張りの通路を通って入り口に向かうと、カウンターに従業員が2人、その背後に何やら機械が見える。

 

 店に入ると、まず人々が向かうのはコンピュータのキオスク。5台ほどのキオスクが並び、そこで注文を入力する。支払いはスマホアプリによるプリペイド、もしくはクレジットカード。現金の場合は「付近のスタッフと話してくれ」というメッセージが出る。最後に自分の名前と名字の頭文字を打ち込むと注文終了、出てきたレシートを持ってカウンターへ向かう。

 

 カウンターの後ろに並んでいたのはテフロン加工を施された深い鍋状のもの。注文が入ると上の金属製パイプを通して材料が鍋の中に送り込まれ、鍋が加熱しながら回転して調理が始まる。それぞれの鍋の上には丸いデジタルパネルがあり、「ジェームズ・Kのチキンを料理中」というような表示が出る。客はパネルを見て自分の料理が機械により調理されている様子を確認することができる。

 一定時間が過ぎ、調理終了になると鍋は回転をやめ、角度を下向きにしてその下に置かれた紙皿に中身を移す。ここまでが自動調理のプロセスだ。紙皿はその後カウンターにいる従業員が運び、サラダなどのトッピングを載せ、ドレッシングやソースをかけて完成、客に手渡される。

 つまり、完全なオートメーションというより材料の選別、運搬、加熱調理はロボットの仕事、その後の仕上げは人の手によるものとなる。それでも注文から客が食べ物を受け取るまでの時間は平均3分。スマホでオーダーしてピックアップも可能だ。

 オートメーションで人手を最低限にすることで、ダウンタウンの一等地にあるにもかかわらずスパイスの価格はボウル(紙皿に守られたライスなどとトッピング)あたり7ドル50セントで提供される。しかも野菜をたっぷりと使ったヘルシーフードで、テイストもタイ風、インド風、ラテン、モロッコ風などバラエティに富んでいる。これに税金、飲み物を入れても平均的な客単価は11−12ドル程度だという。

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